今週の指標 No.776 目次   前へ   次へ 2006年12月25日

このところ伸びが鈍化している新規求人の動向について

<ポイント>

  1. 好調な企業部門から家計部門への波及を考察する上で、雇用情勢の先行指標の一つとして、雇用者数や賃金などの先行指標である新規求人を挙げることが出来るが、その新規求人に、このところ伸びの鈍化傾向が見られる。特に季節調整値(3ヶ月移動平均)は前月比3ヶ月連続で減少している(図1)。また新規求人と同様の動きをとる傾向が見られる求人広告掲載件数に関しても、伸び率(前年同月比)に鈍化が見られる(図2)。
  2. 新規求人の伸び率(前年同期比)の寄与度を産業別に分解すると、直近10月では、建設業、運輸業、情報通信業でマイナスに寄与しているほか、プラスであったサービス業の値が小さくなっており、伸び率の鈍化に大きく寄与していることがわかる(図3)。
  3. 規模別で見ると、従業員29人以下の企業や30〜299人の企業で全体の伸び率(前年同月比)をこれまで押し上げていたが、このところそれも剥落してきている(図4)。また 正社員・非正社員別に伸び率(前年同月比)の推移を比較すると、いずれも似たような動きをしているが、伸び率の値そのものは正社員の方が常に低く、足下ではマイナスの伸び率となっている(図5)。
  4. 地域別に見ると南関東の減少の寄与が大きいが(図6)、これは東京労働局などを中心にこの夏頃から行われている「派遣・請負求人の適正化の推進」の影響も見られる。これは、派遣・請負事業者が、架空の派遣・請負先の求人票や水増しされた求人票を出して人員の確保をしていたこと等を適正化したものである。これにより不適正な求人が排除され新規求人の伸びに影響を与えたことが考えられる。(東京労働局だけで月約1万件以上の請負・派遣求人が減っており、これは全国の伸び率に1%強の影響を与える。)
  5. 一方で日銀「短観」や厚生労働省「労働経済動向調査」などによると、企業の雇用不足感は強まっており、企業収益や生産動向もいまのところ基調に大きな変化が見られないことから、新規求人の大きな落ち込みが起きることは想定し難い(図7)。しかし、今後発表される公表データ、特に例年、年度末にかけて増加する新規求人の伸びがどの程度のものになるか、注視する必要がある。

図1 新規求人と雇用者数の推移(3ヶ月移動平均)
図2 新規求人と求人広告掲載件数の対前年伸び率の推移
図3  産業別新規求人の寄与度の推移(対前年同月比)
図4 事業所規模別新規求人の寄与度の推移(対前年同月)
図5 雇用形態別の前年比伸び率の推移
図6 地域別新規求人の寄与度の推移(対前年同月比
図7 日銀短観 雇用判断DIの推移

(備考)
1.厚生労働省「職業安定統計」、総務省「労働力調査」、社団法人全国求人情報協会 「求人広告掲載件数集計」、日本銀行「短観」により作成。
2.「派遣・請負求人の適正化の推進」に関しては、8月17日に公表された東京労働局のニュースリリース(http://www.roudoukyoku.go.jp/news/index.html)参照。

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 三橋 誠 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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