今週の指標 No.772 目次   前へ   次へ 2005年12月4日

無貯蓄世帯比率の比較

<ポイント>

  1. 金融広報中央委員会より「家計の金融資産に関する世論調査」(以下、金融広報委員会調査)が公表され、無貯蓄世帯の割合が22.9%と、昨年の23.8%から若干ながら減少した。(図1)依然として5世帯に1世帯が無貯蓄世帯であるという結果である。しかし、その他に無貯蓄世帯比率がわかる調査では、厚生労働省の「国民生活基礎調査」は10%程度、郵政総合研究所の「家計における金融資産選択等に関する調査」(以下、郵政研調査)も6%程度と、調査によって異なる結果となっている。(図2)以下では、その点について検証していきたい。
  2. まずは、「金融広報委員会調査」の世帯主の年齢階級別世帯分布に偏りがないかどうかみてみる。一般に、貯蓄額は年齢を追うごとに高くなっていき、無貯蓄世帯の割合も若年層で高めになると考えられる。しかし、「金融広報委員会調査」では、他の調査と比べて若年層の世帯比率はむしろ低く、他の調査に比べて無貯蓄世帯比率が高い要因が、年齢階級別世帯分布にあるとは考えにくい。(図3)
  3. 次に、質問表の設定についてみてみる。「国民生活基礎調査」では特に制約はなく、「郵政研調査」では事業のための預貯金は含めないとなっている。一方で、「金融広報委員会調査」では、貯蓄には(1)商・工業や農・林・漁業等事業のための貯蓄や、(2)給与振込、口座振替などの一時的にしか口座にとどまらないような預貯金は含めないでお答えくださいとされている。まず、事業用貯蓄の有無がどの程度影響するか、各調査の自営業世帯の比率をみてみると、各調査とも15%前後で同水準となっており無貯蓄世帯比率を高めにしているとは考えにくい。そこで、(2)のような一時的な預貯金について検討するため、貯蓄階級別の世帯分布をみてみると、低貯蓄額の階級になるほど、「金融広報委員会調査」での比率は低くなっている。(図4)貯蓄額が少ない世帯については、給与振込や口座振替などで使用している口座に、ある程度の残高で預貯金が存在している可能性がある。しかし、回答者によっては、そのような預貯金が上記の質問設定による「一時的な」預貯金と解釈し、無貯蓄であると回答している可能性が考えられ、そういった世帯が無貯蓄世帯比率を高めている可能性もある。ただし、このことによってのみで、「金融広報委員会調査」の無貯蓄世帯比率の高さを全て説明することは難しい。
  4. 上記は、あくまでも利用可能な公表データからの推測の範囲ではあるが、いずれにせよ無貯蓄世帯の割合自体については、各調査の特徴を捉えた上で、幅をもってみていく必要がある。

図1:金融広報委員会調査での無貯蓄世帯の割合 図2:各調査による無貯蓄世帯の割合(平成16年)
図3:世帯主の年齢階級別世帯分布(平成16年)
図4:資産保有額を回答した資産保有世帯の資産階級別分布(平成16年)
参考:各調査のサンプル数の比較

(備考)
1.金融広報中央委員会「家計の金融資産に関する世論調査」、厚生労働省「国民生活基礎調査」、郵政総合研究所「家計における金融資産選択等に関する調査」、総務省「国勢調査」より作成。
2.特に記載がない場合は、単身を含めた全世帯。
3.図2の20歳代は、「国民生活基礎調査」のみ29歳以下。70歳以上は「金融資産選択調査」のみ70歳代。

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付

   松下 謙祐  直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ   次へ