今週の指標No.765 目次   前へ  次へ 2006年10月30日

中国:外貨準備高の急増と過剰流動性

ポイント

  1.  中国の貿易黒字は拡大を続けており、過去最高であった05年(約1,020億ドル)を06年1〜9月期計で既に超え、約1,100億ドルとなった。こうした貿易黒字等を背景とした経常収支の黒字及び対内直接投資等による資本収支の黒字が続く中、外貨準備高は06年2月末に日本を抜き世界一となった後、9月末には9,879億ドルと1兆ドル目前にまで達している(図1)。
     
  2.  人民元の対ドルレートをみると、このところ変動幅が拡大しているものの、2%の切上げ後、05年7月21日と現在のレートを比較すると、いまだ3%に達していない(図2)。中国人民銀行(以下、中央銀行)は急激な人民元の増価を避けるため、外為市場での介入を続けているとみられ、そのバランスシートをみると、資産の大部分(シェア約6割)が外貨となっており、また外貨の総額は前年(05年8月)と比較して約1兆7,500億元増加している(表1)。負債側をみると、03年から中央銀行債が著しく増加しており、インフレを抑制するために公開市場操作(売りオペ)を通じて市中の人民元を吸収するという不胎化政策を実施していることが考えられる(図3)(*注)。

  3.  現時点では消費者物価上昇率は概ね1%台前半で推移しているものの、マネーサプライ(M2)の伸びは06年の目標値である前年比16%を上回って推移している(図4)。不十分な不胎化が過剰流動性をもたらし、ひいては投資の過熱を招いていると指摘されている中、こうした過剰流動性による銀行貸出及び固定資産投資の速すぎる増加テンポを抑制するため、中央銀行は06年に入り金利引上げ等の引締め策を実施している。その効果もあってか足元のM2及び貸付残高の伸びは低下してきている(図4)。しかし、中央銀行債は大量の発行により買い手がつきにくくなっているともいわれ、今後も不胎化を続けられるかについて不透明な面がある。また、国内の金融調節手段である金利引上げについても、足元で中国とアメリカの金利差に若干縮小がみられる中(図5)、元高圧力となり得る金利の引上げは困難との見方もあり、金融政策は難しい局面が続くといえよう。

    (*注)中国では金融調節手段が限られている中、不胎化政策の一つとして中央銀行自ら「中央銀行債」を発行している。

図1:国際収支及び外貨準備高の推移、図2:人民元、対ドルレート 表1:中央銀行のバランスシート(06年8月)、図3:中央銀行債発行残高 図4:M2と貸付残高の伸び、図5:米中短期金利、備考

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 野口 美雪 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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