今週の指標 No.761 目次   前へ   次へ   2006年10月10日

住宅ローン保有世帯の動向について

<ポイント>

  1. 総務省「家計調査」によると勤労者世帯のうち住宅ローン保有世帯の割合は2005年に約33%に達し、近年高い水準で推移している(図1)。また、家計部門全体でみると、住宅ローン総額は約183兆円(住宅ローン保有1世帯あたり1600万円)、負債に占める割合は約48%となっており、負債に占める割合も近年高まりつつある(図2)。
  2. そこで住宅ローン保有世帯の所得と消費支出の動向をみてみると、所得(住宅ローンを支払う前の可処分所得)、消費支出ともに、住宅ローン保有世帯の減少幅は非保有世帯と比べるとおおむね大きいものとなっている(図3)。特に消費支出の落ち込みが大きいが、これは近年可処分所得対比でみて比率を高めている住宅ローンを家計が固定費として認識しているため(前掲図1)、住宅ローンを支払った後の可処分所得をもとに消費水準を決定しているものと思われる。
  3. 消費支出と所得の関係を消費性向(消費支出/住宅ローンを支払う前の可処分所得)の動きで確認してみると(図4)、住宅ローン非保有世帯の動きは2000年頃から上昇に転じているのに対し、住宅ローン保有世帯の消費性向はほぼ横ばいの動きとなっており、住宅ローン保有世帯が消費支出を抑制しているようにみえるが、住宅ローンを支払った後の可処分所得をベースとした消費性向(消費支出/住宅ローンを支払った後の可処分所得)で比較してみると、非保有世帯とほぼ同様の動きとなる。
  4. ただし消費性向の上昇は、一方で貯蓄を抑制していることとなり、住宅ローン保有世帯は一定の消費水準を維持するためにある程度貯蓄を抑制している可能性が考えられる。ここで懸念されるのは、こうした貯蓄の抑制が長期間継続されると貯蓄の増加ペースと比較して負債の増加ペースが速まることである。実際に住宅ローン保有世帯の貯蓄と負債の関係をみてみると(図5)、年々負債の超過幅が拡大している。
  5. 住宅ローンの返済は、家計のバランスシートから考えれば負債の減少を通して貯蓄を高めているとも言えるが、実際には流動的な金融資産の増加は伴っていない。こうした意味では、今後住宅ローン保有世帯が老後への備えなどを目的に、消費の抑制を通して流動的な金融資産を保有するという行動が考えられることから、今後の住宅ローン保有世帯が貯蓄や消費などに与える影響には注意を要するだろう。

図1.住宅ローン返済世帯の割合と可処分所得に占める住宅ローンの割合 図2.家計部門の住宅ローン残高と負債に占める住宅ローンの割合 図3.住宅ローン保有世帯と非保有世帯の所得と消費の水準 図4.消費性向の推移 図5.住宅ローン保有世帯の貯蓄、負債残高 備考

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 上田 洋一郎 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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