今週の指標 No.729 目次   前へ   次へ 2006年6月19日

賃金と消費者物価の動き

<ポイント>

  1. 消費者物価指数の財と生活必需品を含む「サービス」(注1)を対比してみると、1998年以前は両者の方向感は似ていた。しかし、99年以降は財が景気と連動して動くのに対して、「サービス」は前年比ゼロ近傍でほぼ横ばいの推移をするようになった(図表1)。

  2. サービス業の賃金とサービス物価の関係をみてみると、98年以前は両者は高い相関を示していたものの、98年以降、賃金が横ばいとなると、半年遅れて99年頃からサービス物価上昇率はゼロ近傍となり、賃金が減少に転じた01年以降は両者の連動性が断たれ、サービス物価が下方硬直的な動きをするようになった。(図表2)。

  3. このような現象は「サービス」の特性と「サービス業」の収益性に起因していると考えられる。「サービス」は生産と消費の同時性から、消費者の選択肢が狭まりやすいため、財に比べ需要の価格弾力性が低い(注2)(図表3)。また、「サービス業」は海外との競争が少ないことや、小規模企業比率が高いことなどから製造業に比べ収益性が低い(注3)(図表4)。この2つの特性から、サービス価格を下落させても、需要の増加は期待できない一方(注4)、収益は赤字には直結しやすくなるため、サービス物価は下方硬直的になったと考えられる。

  4. 一方、サービス業の賃金が上昇する局面では、価格弾力性の低さと利幅の薄さゆえ、サービス提供者は価格を上昇させやすいと考えられる。また需要側からみても、サービス需要は所得弾力性が高く(図表3)、経済の拡張局面では需要増からサービス物価が上昇しやすいと考えられる。05年半ばよりサービス業の賃金は緩やかに上昇し、このところサービス物価にも上昇がみられ始めた。ただし、これが持続的な上昇につながるかどうか現段階では判断が難しく、今後の動向が注目される。

    (注1) 具体的には授業料(私立)や工事サービス、理髪料、保健医療サービス等を含む。
    (注2) サービスには在庫が存在せず、消費の時間的・空間的な移動ができないことから、消費者の選択肢が狭まりやすく、価格が変動しても需要があまり変動しない(価格弾力性が低い)と考えられ、ここでの推計も低い結果となっている。
    (注3) サービス業の損益分岐点比率は2000年頃から低下してきているが、これは図表2にあるように、サービス物価横ばいの中、賃金調整に偏重した収益性の改善がなされたことの結果であって、これをもって価格低下の余力があったと解釈することはできない。また、2000年以降についてもサービス業の損益分岐点比率の水準や改善のモメンタムは製造業と比べて大きく劣る。
    (注4) 通信業のように、価格競争によりシェアを拡大するようなサービスもある。ただし、ここで分析の対象としている一般サービスには通信関連サービスは含まない。

図表1 財とサービスの物価
図表2 賃金とサービス物価
図表3 財・サービス別 需要の価格および所得に対する弾力性
図表4 高止まりするサービス業の損益分岐点比率

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 渡辺 浩志 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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