今週の指標 No.708 目次   前へ  次へ 2006年3月20日

物価変動の背景にある労働コスト面及び需給面の動向について

<ポイント>

  1. 物価変動の背景にある単位労働コスト(ULC)の動向をみると、2004年以降、雇用者数の増加により生産性向上要因の押下げ幅が縮小し、さらに賃金の回復傾向を反映して賃金要因が押上げに転じていることなど、雇用情勢の改善により下落幅が縮小傾向にある(図1)。ただし、2005年央以降は成長ペースが高まったこともあり、生産性上昇率が再び加速し、ULCの下げ幅はやや拡大している。
  2. 生産統計ベースのULCにより、業種別にULCの動向をみると、製造業については、2004年後半以降、雇用者数が減少から増加に転じる中で生産性の上昇ペースが鈍化し、下落幅が縮小していることが分かる(図2)。他方、非製造業についても、2004年後半以降、正規雇用者及び非正規雇用者の賃金がともに増加していくなかで賃金要因が押上要因に転じ、下落幅が縮小していることが分かる(図3)。
  3. ULCと需給ギャップ(潜在GDPと現実GDPの差を潜在GDPで除したもの)の動向を見ると、両者は概ね同様の動きをしているが、ULCの動きについて、数期間均した動きを見ても、最近時点では、需給ギャップの減少ほどには低下幅は縮小していない(図4)。この背景には、需給の逼迫ほどには賃金上昇圧力が高まっていない可能性もあり、労働コスト面からの物価上昇圧力は今のところ限定的であるとみられる。また、直近時点の推計では需給ギャップは若干プラスに転じているが、その水準については、供給の定義や推計方法によって異なることから符号を含め幅をもってみる必要がある。加えて、内閣府「日本経済2005−2006」(2005年12月)の推計によると、CPIでみた物価上昇率と需給ギャップの関係は低インフレ・デフレ下で緩やかなものとなっており、需給ギャップの改善による物価上昇圧力は過去と比べて小さくなっている可能性に留意する必要がある。
  4. なお、物価の判断に当たっては、消費者物価指数やGDPデフレーター等の基調やその背景として、需給ギャップやULCといった物価変動要因を総合的にみる必要があり、改善がみられるものの緩やかなデフレ状況が続いていると考えられる。

図1.全産業ULCの要因分解(生産統計ベース) 図2.製造業ULCの要因分解、図3.非製造業ULCの要因分解
図4.GDPギャップと単位労働コストの推移

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 石川 廉郷 直通:03-3581-5854

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。

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