今週の指標 No.681 目次   前へ 次へ 2005年12月5日

日本は「国際収支の発展段階説」における「成熟した債権国」への道を歩むのか

<ポイント>

  1. 2005年度上半期の国際収支統計では年度半期ベースで初めて貿易収支を所得収支が上回った(図1)。日本の対外的な資金の流れに大きな変化が生じつつあるのだろうか?
  2. 一国経済の経済発展段階に応じ貯蓄・投資バランスが変化していくことに着目し、対外的な資金の流れから国際収支構造の変化を説明する参考としていわゆる「国際収支の発展段階説」(表2)が存在する。それに基づき、各国の国際収支状況等から発展段階を分類するとアメリカなどは「債権取り崩し国」、スイスなどは「未成熟な債権国」と位置づけられる(表3)。
  3. 一方、「国際収支の発展段階説」に基づいて日本の国際収支の状況を長期の時系列でみると、高度成長期の1960年代後半に貿易収支が大きくプラスとなり、1980年代には所得収支もプラスに転じ「未成熟な債権国」の状態となった。1980年代後半から1990年代後半までは貿易サービス収支の黒字額の減少傾向が続き、「国際収支の発展段階説」どおりの発展段階を辿っているようにみえる。このまま、所得収支の黒字額が増加を続ける一方、高齢化の進展や賃金高などから貿易サービス収支が赤字化すると「成熟した債権国」の状態と位置づけられる。しかし、2000年以降は輸出も増加傾向にあり、貿易サービス収支の黒字額が下げ止まる傾向にある(表4)。足下2005年の9月までの動きを四半期ベースでみても、循環サイクルの下降局面にある貿易サービス収支も、循環を通じた平均黒字額の水準自体は低下しているわけではなく、原油価格上昇という特殊要因も考慮すれば、状況が変わったと言えるほど低い水準とは言えない(図5)。
  4. そのため、日本が直ちにいわゆる「成熟した債権国」の状態に移行する可能性は高くないと考えられる。加えて、「国際収支の発展段階説」についても必ずしも実態にあっていない部分があるという議論もある。今後日本経済が「国際収支の発展段階説」のサイクルどおりに「成熟した債権国」へと進んでいくのかということについては慎重に検討がなされるべきであろう。

図1−貿易収支と所得収支の推移 図2−各国の国際収支における発展段階
図3−国際収支の発展段階
図4−日本の国際収支の推移
図5−経常収支対名目GDP比率の推移
備考1
備考2
参考文献

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 中野 貴比呂 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ 次へ