今週の指標 No.667 目次   前へ 次へ 2005年10月11日

中国:原油高騰下におけるCPI安定の背景

<ポイント>

  1. 中国の主要エネルギー源は石炭であるが、近年、自動車の普及に伴うモータリゼーションの進展等により原油消費量が拡大し、世界第2の消費国となっている(図1)。以下、原油の消費が拡大しているなか、昨年から続く原油価格の上昇が中国の物価に与える影響をみることとする。

  2. 原油価格(ドバイ)は2005年初から9月末まで約64%上昇しているが、この間、中国のCPI(総合)上昇率は極めて安定している(図2)。CPIにおける当該財のウェイトが低いことも影響しているが、高い成長が続いているにも関わらず、CPI(総合)上昇率が安定している主な要因の1つとして、政府による価格統制制度が挙げられる。

  3. 中国では、石油製品や電力・水道料金等、経済全体に及ぼす影響が極めて大きい一部の品目の価格(いわゆる公共料金)は、政府の国家発展改革委員会によって決定されており、市場の需給が十分に反映されていない。原油価格の高騰が続くなか、ガソリン等の石油製品の値上げは数次にわたり行われているものの、川上でのコスト上昇圧力が川下まで及ばない状況が続いている(図2)

  4. こうした中、石油精製企業の収益は悪化し、赤字に転じている(図3)。また、石油精製分野では、原油の高騰を背景に輸入を控えており、これはこれまでに蓄積した在庫を取り崩して生産を行っているためとの見方があるが、実際に石油製品等の生産の伸びは減速している(図4)。8月中旬には、ガソリン不足が深刻化したことを受け、広東省等で大規模な騒動となり、「油荒(ゆこう)」(石油飢饉)という新たな表現も生まれた。政府に対しては、大手石油企業から石油製品の価格決定方法をある程度市場に委ねるべきとの要求も出始めた。

  5. 以上のように、現行の価格政策の下では、原油価格の上昇により企業収益の圧迫、石油製品の不足等が続くと予想される。政府の国家発展改革委員会は価格制度の見直しを検討中としている一方、中国では、2001年のWTO加盟時の公約にもあるように、2006年には石油製品市場を外資を含む民間企業に開放することとなっている。今後、市場の需給をどの程度反映した価格形成がなされていくか注目に値しよう。



図1.中国のエネルギー消費、図2.燃料費に見られる川上・川下のギャップ、図3.石油精製企業の収益、図4.石油製品等の生産・在庫・輸入の推移

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