今週の指標 No.651 目次   前へ 次へ 2005年8月29日

賃金上昇により労働分配率は下げ止まりへ

<ポイント>

  1. 今年に入り雇用・所得環境の改善は広がりをみせている。失業率は03年以降低下し、労働者数は04年以降改善傾向で推移しているが、05年に入ってからは賃金も緩やかに増加している。今年上半期の雇用者所得(=賃金×労働者数、企業側から見れば「賃金コスト」)も8年ぶりに増加に転じ、労働者数要因、賃金要因ともに増加しており、雇用、賃金両面で改善していることがわかる(図1)。
  2. この背景には、企業業績の改善や団塊世代の退職を控え企業の採用意欲が改善し、雇用過剰感が解消され、労働市場が逼迫しつつあるためと考えられる。日銀短観の雇用判断D.Iを用いて過剰雇用者数を推計すると、04年10-12月期以降は雇用が不足に転じ、05年1-3月期には不足幅が拡大している (図2)。労働市場の逼迫は、ハローワークの充足率(有効求人数に対する就職件数の比率)が93年頃の水準にまで低下していることからも確認できる(図3)。
  3. 今回の景気回復局面では、労働分配率は低下傾向で推移してきたが、雇用・所得環境の改善によりどう推移するのだろうか。現時点で05年4-6月期の法人企業統計季報が利用できないため、労働分配率と類似した動きをする傾向があるSNAベースのユニット・レーバー・コスト(ULC、生産物1単位当たり労働コストのことであり、GDPデフレータを一定と仮定すると、ULCの上昇は労働分配率の上昇を意味する。備考3参照。)から考えてみる。
  4. ULCは98年以降低下傾向を続けていたが、昨年後半あたりから低下のペースが鈍化している (図4)。足許をみると、人件費要因(賃金の増加要因)がULCの押し上げ要因となる一方、付加価値要因(生産性の上昇要因)が継続的に押し下げ要因となり、前年比で若干のマイナス程度となっていることがわかる(図5)。このことから、賃金の上昇によりULCは下げ止まっており、物価面の影響を除けば、労働分配率も賃金の上昇に伴いおおむね下げ止まりつつあるものと考えられる。
  5. 今回の景気回復局面では、企業部門の改善がなかなか家計部門へ波及しなかったが、ようやく家計部門への波及してきた。企業部門と家計部門両面で改善が続くことにより、着実な成長が持続することが期待される。

図1 雇用者所得の要因分解
図2 過剰雇用者数(推計値)
図3 充足率
図4 ULCの推移
図5 ULCの要因分解

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 日野 力 直通:03-3581-9516  
   参事官(経済財政分析−総括担当)付 有馬 基之 直通:03-3581-9516  

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。

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