今週の指標 No.638 目次   前へ 次へ 2005年7月4日

米国長期金利低下の背景

ポイント

  1. フェデラルファンドレートの度重なる引き上げにもかかわらず、米国の長期金利が過去1年間にわたり低下を続けていることに関心が集まっている。FRBのグリーンスパン議長も2月の議会証言においてこのことを「謎] (Conundrum)とし、同様に6月のIMFの会議においても「通常見られない動き」(unusual bahavior)としている(図1)。
  2. こうした状況の下、6月29日・30日に開催されたFOMCにおいては政策金利は大方の予想通り、フェデラルファンド・レート(FF金利)の誘導目標水準を0.25%引き上げ、3.25%となることが決定されたが、足下では長期金利は依然として低下の動きを見せている。
  3. グリーンスパン議長は長期金利の低下は、アメリカだけに見られるものではなく、世界のいたる所で見られるとした上で、この原因について4つの仮説を述べている。しかし、いずれの仮説もこうした現象を説明しきるには不十分としている。
  4. 1つめは景気低迷によるものではないかという仮説である。しかし、グリーンスパン議長は最近の景気上昇を鑑みるに、この仮説は正しくないとしている(図2、3)。
  5. 2つめは高齢化に備えて年金ファンドが長期債への需要を大きくしているのではないかという仮説である。しかし、高齢化は今に始まったことではなく、この仮説の説明力は十分ではないとグリーンスパン議長は結論づけている(図4)。
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  7. 3つめは米国の経常収支赤字のファイナンスに関連し、外国金融当局が米国債の購入を増やしていることによるものではないかという仮説である(図4)。しかし、グリーンスパン議長はこういった行動が長期金利の低下に幾分かは寄与することを認めつつも、FRBの推計によると外国政府の米国債購入の影響は緩やかなものであるとし、現在の長期金利の低下を説明するには十分ではない、としている。
  8. 最後は旧ソビエトの崩壊と中国、インドの世界経済への統合等、世界の財・サービス、金融市場の一体化が進み市場規模が拡大したことにより、ことでインフレ率が低めに推移する傾向があることからリスクプレミアムが低下し、より低コストでの投資が可能になったのではないか、という仮説である。グリーンスパン議長は2月にも同様の仮説に言及していたが、この10年間の長期金利の低下を説明する上では正しいとしながらも、この1年程度の長期金利の低下を説明するには不適切であるとしている。

米国長期金利(10年国債)とフェデラルファンド(FF)レート
GDP成長率(実質)
米国長期金利(10年国債)直近1年分
外国の対米投資の内訳

担当 政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(海外担当)付 是川 夕 直通:03-3581-9536

本レポートの内容は意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。

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