今週の指標 No.618 目次   前へ 次へ 2005年4月4日


中国の農業問題

<ポイント>

  1. 中国における農業問題、いわゆる「三農問題」は2005年3月に開催された全国人民代表者会議において、マクロコントロールの強化・改善に次ぐ重要案件として取り上げられた。税収減による財政負担の増加をもたらす措置を含むものとなっており、政府の三農問題に真剣に取り組む姿勢が示されたものとして注目される。具体的には温家宝総理は農民の収入を増大させるために畜産税については全面免除、さらに5年以内の廃止が予定されていた農業税(平常作柄での一年間の収穫高に基づいて課される国税)の廃止期限を3年(来年まで)以内に短縮するとした。財政状況が芳しくないなか、農業重視の姿勢を示している。
  2. 中国における農業部門は、一人当たりの労働生産性が他の産業と比して著しく低く、伸びも頭打ちであることから(図1)、一人当たり所得が非常に低い水準にとどまっている。国際的に比較しても中国の農業の労働生産性は著しく低い(図4)。その結果、都市住民との所得格差が近年3倍以上に拡大している(図2)。問題の背景には農村部の余剰労働力や、地方政府の恣意的な税率設定や土地強制没収などもあると考えられる。なお、農業収入の増加に限界があることから、農家の兼業化比率も高まっている(図3)。また、戸籍制度などで農家と農村を差別的に扱ってきたことも問題点にあげられる。中国の戸籍制度では農村部に居住する人々は都市部への移住、就職、就学の自由が制限され、国内の労働力の円滑な移動が妨げられていることも指摘される。このように厳しい状況におかれた農業に対するこれまでの政府の支援は必ずしも十分ではなかった。免税及び補助金のために措置された額も、農業従事者一人当たりではおよそ年間80元程度(日本円で1,200円程度)と年収の約30分の1程度であるに過ぎない。
  3. 政府の三農問題に対する積極的な取り組みにもかかわらず、三農問題の解決にはまだまだ相当な困難を伴うとみられる。中国の農産物は国際競争力が低く(図4)、中国の農業貿易動向をみると2004年には初めて輸入超過状態となっている(図5)。こうしたなかでWTO加盟において公約としていた2010年までの農産品の関税引き下げ(15.7%、当時22.7%)を04年に既に前倒しで実施しており、中国の農業はさらに厳しい競争にさらされることにもなる。農業の効率化などによる三農問題の解決は先送りすることのできない重要な政策課題となっている。


図表1:一次産業の労働生産性 図2:農村都市所得格差 図3:農村一人当たりの純収入 図4:農業従事者一人当たりの付加価値 図5:農産物の輸出入

担当:海外担当参事官付 茂野 正史  直通 03-3581-9537  

* 本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。



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