今週の指標 No.597 目次   前へ 次へ 2005年1月11日


ドイツ:国際分業体制の進展と産業空洞化への懸念

<ポイント>
  1. ドイツは、自動車、一般機械、化学等の主要輸出産業の競争力が強く、世界有数の輸出大国であり、ドイツの景気は外需の影響を受けやすい。2000年以降についてみると、国内景気の弱さもあり外需への依存は強まる傾向にある(図1)。
  2. こうしたなか、ここ1年ほどドイツ六大経済研究所の一つであるIfo経済研究所所長をはじめ多くのエコノミストの間で、産業空洞化論、すなわち、国際分業体制の進展に伴って部品などの生産拠点が海外に移転しそれらの現地生産が増加した結果、実質的には生産の大部分が海外で行われた製品をドイツから海外に向けて販売するといった現象に関する議論が活発に行われている。ドイツ経済における生産の現場が縮小し、交易中心になっていくことについて危惧する声も強い。
  3. ドイツの主要産業は、80年代より活発に対外投資を行って国際分業体制を進展させた。特に90年代以降は生産コストの削減を目的として賃金などの費用面で優位にある中東欧諸国に分業体制を広げ、工場移転・現地企業買収を積極的に行ってきた。その結果、オフショア生産が増加し、これらの国からの中間財の調達が増えており(図2、3)、輸入全体に占める中間財の割合は4割近くにのぼっている(図4)。こうした状況を、雇用の輸出と捉えて国内での雇用機会の喪失を危惧する立場と、低コストの中間財調達がドイツ企業の国際競争力を維持し付加価値を高めるものと捉えて肯定する立場とに分かれ、政府を巻き込んで議論するまでに至っている。
  4. しかし、上記のような国際分業体制の進展は、欧州連合(EU)発足及び加盟国拡大により欧州内での国境が消え、物や資本の移動が自由になったという環境変化の下、企業が利潤の最大化のために最適な工場立地を行った帰結である。あくまで経済原理に則した自然な流れであり、歴史的にみてもドイツに限った現象ではない。現在のドイツで産業空洞化について特に盛んに議論されている背景には、それ自体の是非というよりもむしろ、高い労働コストや硬直的な労働市場が企業の競争力を損ねているという構造的で早急には改善が困難なドイツ国内の特殊な事情に加え、このところ内需の不振が続いていることによる、先行きに対する根強い不透明感があると考えられる。


図1 GDP 4−6月期は前期比年率3.0%成長  図2 実質個人消費、前月比(寄与度)

図3 耐久財消費、自動車販売台数の推移  図4 消費者信頼感指数、時間当たり賃金


参事官(海外担当)付補佐  野澤郁代    直通 03-3581-0974
  両角機恵子
  
* 本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。



目次   前へ 次へ