今週の指標 No.580 目次   前へ 次へ 2004年11月8日

デフレ期待は変化しつつあるか?

 
<ポイント>
1. 消費者サイドの物価上昇期待を推計すると、賃金の低下や価格破壊などを背景に90年以降低下傾向で推 移し、2000年後半に入ってからはデフレ期待に転じた(図1)。また、企業サイドの価格判断を見ても、90年 以降は、消費者に近い川下業種での価格競争の激化などにより、販売価格が下がると考える企業数が販売 価格が上がると考える企業数を総じて上回り、製造段階及び流通段階における企業の物価上昇期待はとも に弱く推移した。(図2、3)
2. しかし、最近の物価動向をみると、景気回復を背景に原油等素材価格の上昇などを企業が価格に転嫁す る動きが進んでいる。企業物価は上昇し、消費者物価は横ばいとなっており、デフレ期待にも以下の通り変 化がみられる。
  (1)消費者サイドの期待物価上昇率は03年度に入って弱いながらもプラス圏内で推移した。また、最近の消 費動向調査において、「今後1年間の物価見通し」について質問したところ、4割近くは「変わらない」とみ ているが、2%未満のマイルドな物価上昇を中心に5割弱は「上昇する」と考えており、方向としてはデフレ 期待が解消しつつある様子がうかがえる(図4)。
  (2) 他方、企業サイドの動向をみると、加工業種や小売など川下に近い企業には価格が「下落」するとみる向 きがなお根強く残るものの、素材業種や卸売など川上に近い企業では過去2回の景気回復時のピークを 越え、足元では「上昇」をうかがう局面に入っており、総じてデフレ期待が緩和してきていることがわかる。
3. 日本銀行は、「経済・物価情勢の展望」(いわゆる展望レポート)を公表し、来年度の消費者物価指数(全 国、除く生鮮食品)の上昇率が、前年比で小幅のプラスに転じる見通しを示した(なお、同時に、量的緩和政 策を堅持していく方針を示した)。また、エコノミストによる平均予測においても、ここ数カ月の動きを見ると、 物価上昇率は来年度下げ止まりプラスに転じることが予測されている。このようにデフレ期待は変化しつつあ ると考えられるが、現状は緩やかなデフレ状況にある。

(図1)期待物価上昇率の推移
(図2)製造段階における価格判断DIの推移
(図3)流通段階における価格判断DIの推移
(図4)一年後の物価の見通し

(図5)エコノミストによる消費者物価上昇率の予測


 

(備考)1.日本銀行「全国企業短期経済観測調査」、総務省「消費者物価指数」、内閣府「消費動向調査」、社団法人 経済調査会「ESPフォーキャスト調査」により作成。
    2.シャドーは景気後退局面。
    3.図1の期待物価上昇率はカールソン=パーキン法により推計した試算値。詳細は「平成15年度年次経済財政報告」付注1-4等を参照。
    4.図2、図3の価格判断DIは全規模合計。
    5.図4の調査対象は一般世帯。問いは、「あなたの世帯が日ごろよく購入する品物の価格について、1年後どの程度になると思いますか」。
    6.図5は民間エコノミストによる消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測の総平均。


担当: 参事官(経済財政分析担当)付
岡崎 敏彦 直通 03-3581-9516 
大熊 浩  直通 03-3581-9516 

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。


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