今週の指標 No.554 目次   前へ 次へ 2004年8月9日


財務リストラにより効率化が進む企業の運転資金

<ポイント>

  1.   銀行貸出は、不良債権処理の進展や、景気低迷による企業の資金需要の減退をうけ、 減少を続けてきた。前年比割れとなった97年12月以降の減少額は、累積で約150兆円となった(図1)。 最近では、不良債権問題は、本年秋にも不良債権比率は4%台に低下する見込みで、終息に向かいつつあり、 景気は堅調に回復している。にもかかわらず、銀行貸出は、減少幅が縮小してきたものの、 大きく増加する兆しはみられない。このように貸出が増えにくくなっている要因の一つとして、企業行動の変化が考えられる。
  2.   法人企業統計季報により、企業の運転資金所要額(売掛金+在庫−買掛金)を算出してみると、 98年以降減少が続いている(図2)。この運転資金の減少要因は、売上高が横ばいとなる中で、 運転資金回転期間が短縮している影響が大きい(図3)。 この背景としては、(1)98年の金融システム不安を契機に企業間信用が縮小したこと、 (2)売掛債権の回収期間が短縮していること、(3)IT化の進展で在庫管理の効率化が進み、在庫を圧縮させていることなどが考えられる。 このような企業行動の変化は、全体として資金効率化に向けた動機が強まってきたことを示している。
  3.   97年12月以降の累積額では、運転資金所要額が51兆円減少しているのに加えて、資金繰り懸念の後退や財務リストラの進展で、 手元流動性は約18兆円減少している。また、それに対応する、負債側の短期借入金は約64兆円減少した。 こうした企業の資金効率化の動きの結果、企業のバランスシート規模は縮小している (表4)(図5)。
  4.  上記の通り、企業は資金効率重視の姿勢を強めており、銀行貸出の減少傾向には、こうした企業金融面での変化も影響していると言えよう。


(図1)銀行貸出の動向、(図2)運転資金所要額

(図3)運転資金回転期間と売上高、(表4)企業バランスシートの縮小、(図5)短期借入金と手元流動性、推計母集団の法人数推移

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 林 厚志 直通03-3581-5854

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。


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