今週の指標 No.516 目次   前へ 次へ 2004年4月12日


家計金融資産の動向は窮乏化を示すのか?
<ポイント>
  1.  2003年の家計の金融取引は、運用額を上回る資産の取り崩しにより、1.2兆円の資金不足(赤字)となった。現金預金の増加額の減少や、有価証券の売却、生命保険解約などによる保険・年金の減少が、資金不足に陥った主たる要因である。通常、資金余剰主体である家計が資金不足に陥ったことから、家計の窮乏状態を示唆するものとの指摘もみられる(図1)。
  2.  しかし、詳細に検討すれば、必ずしもそうした解釈は当たらない要因がある。例えば、2002年の現預金は増加額が目立つが、同時に株式以外の証券の売却も増えている。そこで、株式以外の証券の四半期ごとの動きを詳細にみてみると、低水準の金利が継続したことで、信託受益権(貸付信託など)・金融債の売却が続いており、特に2001−02年ではエンロン事件をきっかけとした投信不信で投信解約が増加している(付図)。02年の現金預金の伸びはこうした要因で押し上げられており、03年に大幅な現預金の取り崩しがあったわけではないと言える。また、保険・年金の取り崩しも、低金利が継続しているため、家計資産の保険運用が見直されていることや、企業年金制度を廃止する会社が増えてきているためであるとも考えられる。
  3.  さらに、金融資産残高(時価評価)の変化をみると、家計の純金融資産は、株価上昇を受けて、20.7兆円の純資産増加となった(図2)。株式については、金融資産残高が資産増加になっているが、金融取引としては減少しており、03年の株価の上昇を受けて一部が売却され、現金預金に滞留せずに消費に向かった可能性が読みとれる。
  4.  以上の通り、金融取引でみると、家計金融資産の動向が減少を示しているのは事実であるが、ゼロ金利の長期化による金融資産間の資金シフトの影響などもみられ、また03年では株価の上昇にも支えられて純資産残高は増加しており、家計資産が窮乏化しているとも言い切れない。


図1 家計の金融取引の推移 図2 家計の金融資産残高の推移
付図 家計の金融取引「株式以外の証券」
(備考)日本銀行「資金循環勘定」より作成



担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 林 厚志 直通03-3581-5854 


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