今週の指標 No.489 目次   前へ 次へ 2003年12月22日

企業金融の構造変化の進展


<ポイント>

銀行貸出の減少が続くなかで、企業の資金調達は効率化しており、企業の金融活動は銀行貸出の減少から受ける印象ほど低迷しているわけではない。この点を、コミットメントライン、資産流動化に着目しながら見てみよう。
  1. 銀行貸出の動向
    貸出債権流動化・償却等の特殊要因調整後(*1)でみた貸出残高は、前年比でやや上昇しているものの依然としてマイナスの状態が続いている(図表1)。
  2. コミットメントラインの増加
    企業に対して一定の融資枠を設定したコミットメントラインの契約額が増えている(図表2)。これによって、企業は必要な時にだけ資金を借入れることができるため、これまで緊急時のための保険機能を目的として借入れていた資金を返済することにより、金融費用の削減と負債の圧縮を図ることができる。他方、銀行は貸出を減らすことによる自己資本比率の上昇と、ライン設定による手数料収入の増加を図ることができる。
  3. 資産流動化による調達
    企業は自らの保有する資産を流動化することにより早めに資金を回収できる。実際には、売掛債権や受取手形、預け金や不動産などを流動化するケースが増えている。資産流動化により企業は、自らの信用力ではなく保有資産の信用力を背景として、より低コストで資金を調達できる場合もある。(図表3)。
  4. 実勢に見合った銀行貸出の推計
    以上を踏まえて、企業金融の構造変化の表れである、企業による資金調達の効率化・多様化の動きを要因とした銀行貸出の減少を調整した銀行貸出を推計してみよう。具体的には、(1)コミットメントラインの設定による貸出の減少、(2)企業の資産流動化による資金調達の増加、による減少を調整した銀行貸出を推計すると(*2)、前年比1%弱のマイナスにまで上昇する(図表4)。


図表1:銀行貸出の動向、図表2:コミットメントラインの動向、図表3:資産流動化型信託の残高、図表4:調整後銀行貸出

(注)
日本銀行金融経済統計「貸出・資金吸収動向等」、「コミットメントライン契約額末残等の推移」、信託協会「信託の受託概況」より作成。
(*1)・・・特殊要因調整後貸出残高は、(1)貸出債権流動化要因、(2)為替変動要因、(3)貸出債権償却要因、を調整したもの。日本銀行公表。
(*2)・・・特殊要因調整後貸出残高にコミットメントラインの空枠(契約額−利用額)の増加分、資産流動化の増加分を加えたものを前年の貸出残高と比較した。資産流動化計数は、企業の資金調達に関するものを見るため、日本銀行「資金循環」統計の債権流動化関連商品より貸出債権に関わるものを控除し、不動産の流動化計数を加えたもの。四半期、半期公表の統計については、月次に均して推計した。


担当:参事官(景気判断・政策分析総括担当)付 金澤光俊 直通 03-3581-5854


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