今週の指標 No.456 目次   前へ 次へ 2003年8月25日


アメリカと日本の労働市場について


<ポイント>
  1. 米国と日本のUV曲線(備考2)を比べてみると、米国では、IT産業を中心に景気が拡大した1990年代に、構造的失業率が低下したが(図1)、日本では、景気が低迷した1990年代に、構造的失業率が増加した様子が窺える(図2)。
  2. 米国では、IT産業の技術者への求人が増大したのをうけて、IT技術者を育成するための教育機会が大学等で提供されるなど、非製造業を中心に、いわゆる「雇用のミスマッチ」が解消される傾向にあった。これに対して、日本では、右肩上がりの成長が続いたことや伝統的な雇用慣行(終身雇用制度、年功序列賃金など)が根強かったため、経済の構造変化が急速に進む中で、成長が期待される産業に必要な人材の育成が進まず、求人と求職がうまく折り合わなかったためと考えられる。
  3. また、オーカン係数(失業率の増加により経済成長率が何%低下するかを示すもの)でみても、米国(1.92)より日本(6.3)の方が大きく(図3、4)、米国の労働市場の方が柔軟性が高かったことを窺わせる(オーカン係数の逆数は労働市場の柔軟性を示す一つの指標となっている)。
  4. 実際、米国では、労働者が絶えず教育・訓練を通して知識・技能を修得し、雇用を取り巻く環境の変化に柔軟に対応してきたのに対して、日本では、労働者が急速な技術革新による技能・知識の高度化に対応する環境が整っていなかったため、雇用を取り巻く環境の変化に柔軟に対応できなかったと考えられる。


図1.アメリカのUV曲線図2.日本のUV曲線
図3.アメリカの成長率と失業率の関係の変化(1980〜2002年)図4.日本の成長率と失業率の関係の変化(1980〜2002年)


(備考)
  1. 図1、2、3、4はデータストリームより作成。
  2. UV曲線:失業率(unemployment)を縦軸、欠員率(vacancy rate)を横軸にとって両者の関係を見る分析手法。
    それぞれの頭文字をとってUV曲線と言われる。欠員率が上昇すると失業率は低下し、逆に欠員率が低下すると失業率は上昇する関係を示し、右下がりの曲線となる。通常は景気動向に合わせてUV曲線上を移動する。
    しかし、人手不足が生じているにも拘わらず失業が一向に解消されないという、所謂“雇用のミスマッチ”(構造的失業)が拡大すると、UV曲線自体が右上方向にシフトする。
担当:参事官(景気判断・政策分析総括担当)付 岡崎 敏彦  直通 03-3581-9516


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