今週の指標 No.455 目次   前へ 次へ 2003年8月18日


中国:高まる人民元の切り上げ論


<ポイント>
  1.  中国では、1994年以降、「管理変動相場制」が採用されている。これは、人民元の為替相場は市場に任せるが、必要に応じて政府や通貨当局(中国人民銀行)が介入する制度である。政府や当局が常時介入するため、ここ数年は1ドル=8.276〜8.28元の間の狭い幅で変動しており、事実上、ドルペッグ制となっている。
  2.  最近、人民元の切り上げを求める意見がある。貿易黒字の継続と外貨準備高の急増がその背景である。2001年12月、世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、輸入が増大しているものの、輸出の伸びは著しく、2002年の貿易黒字(GDP比)は拡大した。特に、対米黒字は年々増加している(図1、2)。
  3.  ドルペッグ下で貿易黒字と大量の資本流入が続くことから、外貨準備高が近年急増している(図3)。企業や個人の外貨保有は規制されているので、輸出で得た外貨は中央銀行が買い上げている。これらを受けて、マネーサプライは急速に伸びが高まっている(図4)。マネーサプライの大幅な増加は過剰流動性につながりかねず、投機的取引の頻発や都市部における不動産バブル等の懸念が生ずる。
  4.  人民元の切り上げを求める声に対して、中国政府や通貨当局は、「当面、人民元相場の基本的安定を維持し、相場形成メカニズムを整備する。」と表明し、人民元の切り上げに否定的な態度を示している。その一方で、政府は中国企業による外国債券購入の許可や、中国企業と個人の国内外での外貨保有制限の緩和を行う方針と言われており、外貨流入に対処しつつある。また、人民元の変動幅が拡大されるのではないかとの見方もみられるが、今後の動向が注目される。


図1 中国の貿易収支  図2 対外黒字(対GDP比)

図3 外貨準備高  図4 マネーサプライ(M2)


担当:参事官(海外経済担当)付 小清水 世津子 直通03-3581-9537 


目次   前へ 次へ