今週の指標 No.368 目次   前へ 次へ 2002年8月19日

業種別株価の決定係数とベータ値からみる本邦株式市場の動向

<ポイント
  1. 業種別株価指数の決定係数

  2.  (式-1)のような東証一部の業種別株価指数のリターンをTOPIXのリターンで説明した市場モデルの決定係数(R)は、60営業日を1期間として算出した場合、直近期の動きとして33業種中25業種で上昇している(表1)。このような足元の決定係数の高まりは、業種別株価指数の変動について、個々の業種に特有な要因よりも、株式市場全体に関わる要因(例えば景気動向などが考えられる)による影響が高まってきていることを示唆している。
  3. 業種別株価指数のベータ値

  4.  (式-1)において得られる定数β(ベータ)は、TOPIXの変動に対する業種別株価指数変動の感応度を示す。業種別株価指数のパフォーマンスと照らし合わせると、パフォーマンスが上位にきている業種の多くは、ベータ値が1を下回る業種、いわゆるディフェンシブであるとされる業種であることが分かる。(表2)

表1 主要業種の決定係数と変動状況

表2 パフォーマンス上位業種とベータ値

(備考)
  1. ブルームバーグより作成。
  2. 表1について、期間は、2002年8/14を基準に過去60営業日を1ピリオドとして算出。決定係数は自由度修正済決定係数を使用し、変動は前期に対するR2の動きを示す。
  3. 表2について、パフォーマンスは、2002年の8/14と5/23(60営業日間)の2時点変化率、ベータ値は2002年8/14を基準とした過去240営業日から求めた。
(参考)
 分散投資によるリスク軽減効果は、現代ポートフォリオ理論における最も基本的な考え方の一つであるが、こうした考え方に立ち、個々の証券価格の変動は、その証券が属する市場全体の価格の変動と1次の関係にあると仮定すると、個別証券価格の変動Riを被説明変数、市場全体の価格変動Rmを説明変数とする以下の回帰式が成り立つ。
Ri=α+βRm+e ・・・・(式-1)

 (式-1)は2つの要素から構成され、市場全般と関連した要素であるβRmと、個別証券に固有の要素を示すα+eからなる。eは誤差項であるが、その最善の推定値は0である。今回の分析は、Riを業種別株価指数の日次変化率、RmをTOPIXの日時変化率とし、最小二乗法により推計を行った。
<推計例>
Ri= 0.0005 + 1.0492Rm
   (0.4476)   (11.5792)
R(自由度修正済)=0.6928

 (式-1)の推計結果における決定係数(R)は、市場モデルの説明力の高さを示すと共に、個別銘柄のリターンのうち、何%が市場全体からの影響によるものかを示し、上式の例では、輸送用機器のリターンのうち、69%がTOPIXのリターンからの影響であることを示す。
 また、β値は、TOPIXのリターンに対する輸送用機器のリターンの感応度を示し、上記の例では、TOPIXのリターンに対して、輸送用機器のリターンは1.049倍となることを示す。β値が1未満の場合は、市場全体が下落しても、その銘柄の下落率は市場全体の下落率よりも小さくなるため、こうした銘柄はディフェンシブであると表現される。対してβ値が1を超える銘柄は、オフェンシブであると表現される。

図 輸送用機器

担当:参事官(景気判断・政策分析総括担当)付 大久保享史 直通03-3581-5854

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