今週の指標 No.351 目次   前へ 次へ 2002年6月17日

最近の産業構造の変化と資金調達

<ポイント>

  1. 最近の産業構造の変化
     1995〜2000年にかけて産業全体の実質生産額は、1.06倍に成長した(年率1.2%増)。この間、IT関連業種や各種サービス産業を中心に、消費・投資や輸出等の最終需要の増大が直接・間接に生産拡大につながった産業(その他電気機械(電子・通信機器等)、医療・保健衛生、飲食店等)や、生産プロセスの変化等に伴い中間投入としての利用度を高めた産業(電信・電話、業務用物品賃貸業、その他事業所サービス等)は、平均を上回る成長を遂げ、シェアを拡大させている。逆に、製造業では金属製品や身廻品、非製造業では建設業、卸・小売業など、最終需要の減少や中間投入としての利用度の低下、輸入品による代替に直面した産業の成長は平均を下回り、シェアを縮小させている(図1)。
  2. 資金調達との関係
     最近の生産シェアの変動と企業による長期資金調達との対応関係をみると、各産業の資本金残高や社債残高のシェアの変動との間に有意な正の相関関係がある一方、金融機関借入との間では有意な関係にない(図2)。間接金融の資金仲介機能が低下する中、産業構造の変化に対しては、直接金融市場からの資金調達が感応的であったことが示唆される。

図1 シェア変動上位・下位10業種と各要因の寄与率

図2 生産シェアの変動と長期資金の関係

担当:参事官(景気判断・政策分析総括担当)付 清谷 春樹 直通 03-3581-5854

注)各産業の平均成長からの乖離要因の試算方法

時点1(1995年)の産出量のベクトルX1は、

   X1=A1X1+Fd1+E1−m1(A1X1+Fd1)

 (A:投入係数行列、Fd:国内最終需要ベクトル、E:輸出ベクトル、m:輸入係数行列)

  ⇔X1=[I−(I−m1)A1]−1[(I−m1)Fd1+E1]

   ⇔X1=B1[(I−m1)Fd1+E1]

     (I:単位行列、B=[I−(I−m)A]−1)

で表される。ここで、時点1から時点2(2000年)にかけて、産業全体の産出額は1.06倍に拡大している。投入係数や輸入係数が不変であり、あらゆる産業に対する最終需要が1.06倍に拡大していれば、すべての産業で産出が1.06倍に成長していたはずである。すなわち、

   1.06X1=1.06A1X1+1.06Fd1+1.06E1−m1(1.06A1X1+1.06Fd1)・・・(1)

が成立する。他方、現実には産業間で最終需要や投入係数、輸入比率に変化が生じているため、第2期の産出ベクトルX2は、

   X2=A2X2+Fd2+E2−m2(A2X2+Fd2)・・・(2)

と表される。(1)と(2)の差を取って整理すると、各産業の産出の平均成長からの乖離を表すベクトルdX(=X2−1.06X1)を、時点2の逆行列B2=[I−(I−m2)A2]−1を用いて次のように表すことができる。

   dX=B2(I−m2)δFd+B2δE+B2(m1−m2)(1.06A1X1+1.06Fd1)

       +B2(I−m2)(A2−A1)(1.06X1)・・・(3)

         (δFd=Fd2−1.06Fd1, δE=E2−1.06E1)

(3)式の右辺は、各産業の産出の成長が平均的な成長から乖離する要因を示している。すなわち、第1項及び第2項は、国内需要や輸出の成長が産業間で非対称なことにより生じる生産額の不均一成長を表し、第3項は輸入代替の変化がもたらす影響を、第4項は、投入係数の変化により生じる不均一成長を表している。

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