平成9年

年次世界経済報告

金融制度改革が促進する世界経済の活性化

平成9年11月28日

経済企画庁


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第1章 世界経済の現況

第1節 拡大続く世界経済

(97年は先進国で拡大,途上国で鈍化)

世界経済は,94年以降堅調な拡大が続いており,95年に一時的にやや鈍化したあと,96年も拡大した。97年は,途上国で鈍化するものの,先進国の拡大から,全体的には拡大傾向で推移するものとみられる(第1-1-1表)。

世界全体の実質GDP成長率(IMF統計,以下同じ)は95年の3.7%から96年には4.1%へと高まった。96年の成長率が高まったのは,先進国の高まりに加え,途上国で中南米諸国等を中心に加速し,市場経済移行国でもそれまでのマイナス成長がプラス成長に転じたことによる。

97年の世界の実質GDP成長率は,IMFの見通しによるとアメリカやヨーロッパで成長率が加速するなど先進国で高まり,中南米で加速する一方アジア等での低下から途上国では低下となるが,全体としては4.2%と引き続き加速が見込まれる。

(先進国経済:拡大テンポが高まる)

先進国の実質GDP成長率は,96年2.7%のあと,アメリカやヨーロッパで成長率が高まることにより,97年には3.0%の見込みとなっている(第1-1-2図)。

アメリカ経済は,91年3月に始まった景気拡大が7年目に入った。96年の景気は,堅調な雇用拡大による個人消費の回復や情報化投資を中心とした設備投資の大幅な増加などにより拡大した。97年に入っても設備投資や生産が増加しており,景気の拡大が続いている。失業率は低水準で推移する一方,物価は安定している。

西ヨーロッパ経済は,96年,ドイツ,フランスで前半足踏みを示した景気が半ば以降外需の好転から緩やかに改善し,イギリスでは内需主導による景気の拡大がみられた。97年に入ってからも,総じて回復が続いており,成長率は前年より上昇が見込まれる。失業率はドイツ,フランス等において高水準で推移しており,イギリスで低下している。物価は全般的に安定している。

その他先進国では,カナダ経済は95年後半から拡大している。オーストラリア経済は緩やかな拡大が続いている。日本では,このところ回復テンポは緩やかなものとなっている。

(途上国経済:アジアを中心に鈍化)

途上国は,実質GDP成長率が95年の6.0%のあと,96年はアジアでは鈍化したものの,中南米やその他途上国で拡大したため,成長率は6.5%へと高まった。97年はアジアで引き続き鈍化することなどのため成長率は6.2%となる見込みである(第1-1-3図)。

成長率を主要地域についてみると,アジアは,96年に輸出の不振等から中国,アジアNIEs,東南アジアで低下したため,全体で低下した。97年も中国,ASEAN等で引き続き低下することから,全体で低下が見込まれる。中南米は,95年に大幅に鈍化した後,96年にメキシコで回復がみられたことから成長率は高まり,97年も引き続き加速する見込みである。

物価は,アジアで96年は上昇率が一桁に低下した後,97年も同程度の水準と安定している。その他途上地域は依然二桁の物価上昇が続いているが,上昇率は低下傾向にある。

経常収支は,アジアでは赤字の縮小が見込まれるが,中南米では赤字の拡大が続くものと見込まれる。

(市場経済移行国経済:全体では拡大テンポが加速)

市場経済移行国の経済は,96年には中・東ヨーロッパ諸国で拡大傾向が続いていること,ロシアにおいても実質GDPのマイナス成長の幅が縮小したことなどから,全体としてプラス成長に転じた(前掲第1-1-3図)。97年には中・東ヨーロッパ諸国の成長率が加速することから,全体としても高まる見込みである。

ロシア,中・東ヨーロッパとも物価上昇率は,高水準ながらも緩やかに低下してきている。ロシアでは貿易収支の黒字幅は拡大している。中・東ヨーロッパの経常収支の赤字幅は拡大している。

(世界貿易:先進国を中心に回復)

世界貿易量(実質)の成長率は,94,95年とアジア途上地域の活発な輸出を反映して9%を超える高い伸びを示した後,96年は世界的な半導体の輸出低迷などからアジアを中心に途上地域が不振となり6.3%へと低下した。97年は途上国の輸出入が引き続き鈍化するものの,先進国の輸出入が回復に転じることから,全体では7.7%へと回復が見込まれている(前掲第1-1-1表)。

貿易財・サービス価格(米ドル建て)の動きをみると,94年,95年と上昇した後,96年は1.4%の下落となった。原油価格(北海ブレント,ドル/バレル)は中東情勢の緊張などにより96年は20.8ドルへと上昇した後,97年に入ってから弱含みとなり7~9月期は19.2ドルとなった。一次産品価格(CRB先物指数)は,96年央まで上昇基調で推移していたがその後下降に転じ,97年央には2年ぶりの低水準となるなど調整局面にある。

世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)では,96年12月に95年の設立以来初めての閣僚会議がシンガポールで開催された。この会議では,ウルグアイ・ラウンド合意の実施の点検等の他,情報技術合意(ITA:Infor-mation Technology Agreement)がまとめられ,半導体やコンピューターなどの情報機器の2000年までの関税相互撤廃が合意された。アジア太平洋経済協力(APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation)の第4回首脳会議(96年11月,マニラ)では,貿易・投資の自由化・円滑化のための「行動計画」が採択され,97年1月から実施されている。


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