平成6年

年次世界経済報告

自由な貿易・投資がつなぐ先進国と新興経済

平成6年12月16日

経済企画庁


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第2章 経済自由化で活性化する新興経済


第2章のポイント

【活性化する新興経済】

・急成長を続けている東アジア成長経済(アジアNIEs,ASEAN,中国)に続いて,80年代後半~90年代初め以降,中南米や東ヨーロッパのー部,ベトナムやインドなどアジア諸国の経済成長が加速しており,新興経済(EmergingMarketsないしEmergingEconomies)として注目を集めている。

・新興経済の経済パフォーマンスを比較すると,輸出の拡大,投資率の上昇,生産性の向上といった共通の特徴がみられる。

【新興経済台頭の政策的要因】

・新興経済では,①財政赤字を抑制し,貨幣の増発によらない節度ある財政運営に努めることによってインフレの制御に成功するとともに,②保護主義的な経済政策を改め,市場メカニズムの働きを重視した経済政策へと転換した結果,経済成長が加速した。

【外向きの経済政策】

・新興経済では,貿易自由化,割高な為替レートの修正,外資規制の緩和といった外向きの経済政策が導入された。それによって従来保護されていた産業に代わって,本来比較優位を持っている労働集約型産業を中心に,輸出の拡大や直接投資の流入がみられ,経済の成長に寄与した。

【金融市場の効率化と国際化】

・新興経済では,金利自由化や金融業務の規制緩和などの金融自由化が進められた結果,金融資産の蓄積が進み,金融仲介が量的に拡大した。また,金利機能を通じて効率的に資金配分が行われるようになった。

・証券市場が整備され,株式市場が急速に発展した。その結果,低コストの長期資金の調達が可能となり,資金運用の多様化も進んだ。

・直接投資や証券投資の受入れに関する規制が緩加され,海外からの資金流入が拡大した。


70年代以降急成長を遂げている東アジア成長経済(注)に加え,80年代後半から90年代にかけて,中南米や東ヨーロッパ,ベトナム,インド等のアジア諸国のなかのいくつかの国々においても,経済が活性化している。これらの国や地域は新興経済(Emerging MarketsないしEmerging Economies)と呼ばれ,先進国の貿易相手国として,あるいは直接投資や証券投資の投資先として注目を集めている(第2-1-1図)。本章では,新興経済の経済パフォーマンスや経済政策の共通点を検討し,新興経済が活性化している政策的要因を明らかにする。特に,マクロ経済政策(第1節),貿易自由化や外資規制の緩和(第2節),金融自由化(第3節)が,新興経済の成長にどのように寄与しているのかを検討する。


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