平成4年

年次世界経済報告

世界経済の新たな協調と秩序に向けて

経済企画庁


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第4章 相互依存関係の広がりと深化

現在,世界経済は市場経済化という一つの軸を中心に再編されている。その中で,先進国経済は景気調整下の構造の調整という問題に取り組まなければならない。また,市場経済移行国は秩序立った政策によってスムーズに市場経済の枠組みを確立し,世界経済との融合を進めなければならない。いずれにおいても,その解決へのプロセスにおいてはある程度のコストを伴うことが予想されよう。それゆえ,このような再編に伴うコストを世界経済がどの様に最小化し,負担しあうかが今後のポイントである。その際重要な視点は,これらのコストを一国市場経済の枠組みの中だけで解決するのではなく,一国経済を越えたより大きなマーケットの中で規模の経済性と競争の活性化を通して経済成長の果実を大きくしながら解決していくという視点である。

このような動きは,世界の各地で進行している。第1章3節でみたEC統合に向けたヨーロッパの長い間の努力も,このような視点から位置付けることができる。また,世界の成長の核になってきたNIEs,アセアンや最近注目されるようになってきた華南経済圏やインドシナ経済圏における相互依存関係の広がりと深化の動きも急速である。更には,北米地域でみられる産業内貿易や直接投資を軸とした相互依存関係の進展も注目できる動きである。

しかしながら,このような地域経済圏への確実な動きもいくつかの課題を有している。本章では,東アジア地域のダイナミズムの背景と現状及び今後の課題,北米なかんずく米墨間の相互依存関係の高まりの背景と現状及び北米自由貿易協定(NAFTA)の持つ意味について検討し,最後にこうした動きを戦後一貫して追求してきたグローバリズムのルールの中にどう調和させるかという点についてもあわせて検討することとする。


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