平成4年

年次世界経済報告

世界経済の新たな協調と秩序に向けて

経済企画庁


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第3章 市場経済移行国の経済改革と世界経済への融合

現在の世界経済が直面している最も大きな課題は,現在起きている市場経済への移行と世界経済への融合をいかにしてスムースに実現していくかということにある。中・東欧諸国においてはポーランド等で急進的な経済改革が始まって約2年が経過し,92年になると旧ソ連地域でも本格的な改革がスタートした。しかし,これらの国では全体としてなお困難な状況が続いており,市場経済への移行の困難さを改めて示している。他方,アジアにおいても中国,ベトナムでは,社会主義の政治・経済体制は維持しつつも,市場メカニズムを極力活用するという弾力的な対応を図ってきており,中国では目ざましい経済発展を過去10年あまり遂げてきた。

この章では,市場経済移行国における価格の自由化,経済の安定化政策,市場経済が機能するための各種制度の整備,国営企業の民営化等改革の主要な分野について,これまでの幾つかの国の経験を振り返りながら,改革とその影響がどのようなものであったかを見ていく。特に,ロシアでは改革が始まったばかりであり,今後のロシアが取り組むべき課題あるいは改革の進め方について,他の国のこれまでの試みを参考としながら考えてみることとする。

このため,まず第1節では中・東欧諸国における改革の動きをみるとともに,経済にどのような変化が現れてきたかを分析する。次いで第2節ではロシアを取り上げ,まだ改革の初期段階であるが,これまでに現れてきた諸問題とその背景について見ていく。その後,改革へのアプローチは異なるが,中国,ベトナムの経験を振り返る。最後にこれらを踏まえた上で,市場経済に向けての経済改革のあり方について検討を行うこととする。


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