平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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II 1990~91年の主要国の政策動向

第11章 中  国

3. 国営企業改革

中国の国営企業は,企業数は10万社で全体の1.3%に過ぎないが,工業生産額では全体の6割を占めており,中国経済の根幹でもある。しかし,その経営状況は,3分の1が赤字経営,もう3分の1は潜在的な赤字経営となっている。このような国営企業の経営効率の悪化は,財政赤字拡大の原因となっており,中国政府も早急に解消すべき問題点として重視している。

(1)国営企業活性化のための12項目の対策を決議

9月23日より開催された中央工作会議での李鵬首相演説において,国営大中型企業の活性化のための12項目の対策が決議された。内容は以下の通りである。

① 企業の技術改造資金への投入額を強化

国家予算内の技術改造資金を拡大するとともに,外貨決裁残高の一部を充てる

② 国営大中企業への指令的計画の縮小

③ 減価償却率の引上げ,固定資産の再評価の実施

④ 新製品開発積み立て金の増額

販売収入の1%を積み立て金として控除

⑤ 企業の運転資金の補充の継続

企業側の自己資金からの転用を要請

⑥ 金利の適度な調整

⑦ 一部企業への貿易権の付与

⑧ 「双保」の継続実施

「双保」とは,国が企業の生産条件(エネルギー,原材料の供給等)を保証し,企業は国の統一分配製品と利潤の上納を請け負う制度を指す。既に2年実施しており,国家の分配物資,資金確保を助けてきたが,経済情勢が好転した際は次第に減らす意向

⑨ 三角債の清算

⑩ 大型企業集団の試験的な結成

大企業を中心とした複数企業の集合体を形成し,多角化経営を行う。

⑪ 「三乱」(企業に対する地方政府の過度の費用徴収・割当,罰金)の撤廃

⑫ 国営企業に対する所得税の引下げ

55%から33%へ引き下げる

(2)「三角債」の清算に着手

89,90年の経済調整期には,多くの国営企業が経営難に陥った。その結果,複数企業間で債務不履行が生じるケースが多発している。この現象は,債務を返済されない債権企業が他の企業に対して同様に債務不履行に陥り,企業間債務の環ができる様から「三角債」と称されている。その滞った資金額は91年には2,800億元と,中央財政の規模に匹敵するまでに膨張した。こういった企業間債務の拡大は,企業経営の好転を遅らせ,重要な歳入源である企業からの税収に影響を与えるため,政府は90年より「三角債」の清算に取り組んでいる。

91年7月,従来の国家生産委員会に代わって,生産弁公室が設置され,朱副首相を主任とし,主に国営企業の改革に取り組むこととなった。朱主任はまず,8月半ばに東北3省を「三角債」清算実験地区に指定,作業班を派遣し,9月下旬からは全国規模で清算作業が進めている。清算のため国は,生産性の低い投資事業の中止,企業の管理費(集団購入費用等)の切詰め,在庫の縮小,経営不良企業の生産停止措置等を講じて企業経営の改善に取り組む一方,284億元の銀行融資を投入した。この結果10月末までに全国で1,011億元が清算されている。

(3)国営企業の経営に外資企業等の経営メカニズムを導入

国営企業の経営が低迷する中,外資企業,郷鎮企業は好調に拡大している。

政府はこれらの企業の経営メカニズムを国営企業に導入し,活性化を促す措置を取り始めている。

上海では,9月末に国営企業2社を経営体制転換のモデル・ケースとすることを決定した。これら企業に対しては,経営自主権の拡大(生産,経営,投資の計画,製品価格の決定権),政府機関との縦割体制の打破,所得税税率の調整など,外資企業に準じた体制転換が試みられている。次いで10月末に3社,さらに今後の計画として新たに2社について経営体制の転換を試みることとされている。

(4)国営企業の生産停止,閉鎖措置を実施

88年に「企業破産法」が公布されたが,住宅,教育等従業員の生活が企業に大きく依存している中国では,国営企業の倒産は実施が難しく,実際には倒産例はほとんどみられかった。しかし,91年10月,35大中都市の各政府に対して年内に経営状況の悪い国営企業を最低10社閉鎖するよう通達が出された。閉鎖された企業の従業員は,他の企業に配置替え,もしくは失業期間,賃金額の6,7割の支給を受けることとなる。

この結果,11月末段階で東北3省で119社,河北省で120社が閉鎖,生産停止,合併,転業が実施されている。四川省では540社が閉鎖,合併され,北京では188社が閉鎖,供給過剰となっている308種の製品については生産制限が行われている。

図表 中国の国営企業の利潤総額と赤字総額の推移

図表 国営企業の資本利潤率と製品コスト上昇率の推移

(中国の行政機関)

図表


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