平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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I 世界経済白書本編(要旨)

はじめに

今回の年次世界経済報告は,以下のとおり4つの章で構成されている。

第1章は,世界経済の現局面とその特徴を述べている。ここでのポイントの第一は,アメリカ,イギリス等と日本,ドイツ等の間で景気局面に乖離がみられたことである。その主な要因は為替レートの動きと不動産投資の相違に求められる。第二は,アメリカの景気回復力が弱いことである。これは,80年代の無理をした景気拡大のツケが,財政,家計及び企業の債務問題,銀行部門の脆弱化,不動産不況という形で残っていることによると判断している。第三は,統一後のドイツで採られたマクロ政策が,80年代前半のレーガノミックスと類似していることである。当時のアメリカと比較した場合,現在のドイツでは家計部門の貯蓄率が高いこと,増税措置がとられたことなど健全な要素がみられる。

第2章は,ソ連と東欧の経済問題を取り扱っている。ソ連については,政治・経済面での再編成の動向を解説するとともに,共和国間の密接な経済的相互依存関係,コメコンの仕組みと崩壊に至った原因,戦後の西欧復興を支えたマーシャル・プランと欧州決済同盟の考え方と手法を分析し,これらの分析を踏まえて西側の対ソ支援について,考え方と方法を論じている。東欧については,民営化を含む経済改革の状況と経済の現状及び対東欧支援の実状を述べている。

第3章は,世界の資金循環と資金不足の問題を分析している。まず,世界の資金フローの最近の変化を概観し,アメリカへの資金流入が急減している一方,ECとアジア向けが増勢を維持していることを述べている。次に,先進国の長期金利が89年末から90年初めにかけて上昇し,その後も高どまっているという現象を取りあげ,その原因を分析している。世界経済における今後の資金需給については,定量的な試算を行い,92,93年には大幅な資金不足が生じると見込んでいる。金利の上昇を伴うことなく,資金不足を是正する措置として,貯蓄の増強等の政策を提言している。

第4章は,世界の地域的な結びつきを取りあげた。西太平洋地域では,アジアNIEs,アセアンなどの相互依存関係の深まりを分析し,さらに,局地的な経済圏を形成する動きを紹介している。また中国の,78年以降の経済改革の動向と現在の課題を説明している。ヨーロッパでは,ECの市場統合と経済・通貨統合,南北アメリカ大陸では,米墨加自由貿易協定や中南米諸国による自由貿易地域の設立構想を取りあげた。最後に,地域的な結びつきの合理性と問題点を論じ,ブロック化の動きを牽制,監視する上でも,GATTウルグアイ・ラウンドを成功させる必要があると強調している。


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