平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第8章 ソ  連

3. 賃金・物価

所得面では,90年1~9月期の国民の貨幣所得は4,610億ルーブルで前年同期比14.4%増となり,年間計画(7.1%増)を大幅に上回っている。

名目賃金は,88年以降上昇傾向が続いており,労働者・職員の月平均賃金は90年1~9月期257ルーブル(前年同期比8.4%増),コルホーズ農民の労働報酬は同185ルーブル(同10.8%増)と,いずれもかなりの高まりを見せている(前掲第8-1表及び第8-1図)。

他方,支出面では,国営商店の慢性的品不足により価格の高い(国営商店の5~10倍程度)協同組合商店やコルホーズ市場(自由市場),あるいはヤミ市場等での購入に頼らざるを得ないため,90年1~9月期前年同期比で労働者・職員の家計支出は食料品5%増,非食料品15%増,コルホーズ農民の家計支出は食料品7%増,非食料品12%増と所得の上昇と同程度の伸びを見せている。

物価動向をみると,総合消費者物価指数の上昇率は90年1~9月期前年同期比3.7%で,うち国家価格(小売商品取引の95%は当価格による)は3.6%と比較的落ち着いているものの,協同組合価格(同2.4%)は6%,コルホーズ市場(自由市場)価格(同2.6%)は24%と高い上昇を示している。また,国家価格の中でも食料品価格は供給不足を反映して野菜27%,果物22%,ジャガイモ16%等と高率の上昇となっている。コルホーズ市場での,食料品価格上昇率は1~6月期前年同期比18%の後,7月前年同月比29%,8月同30%,9月同34%と加速している。品目別にみると,1~9月期前年同期比で肉30%(9月前年同月比49%),野菜31%(同41%),果物26%(同29%),ジャガイモ4%(同30%)等と高い上昇率を示している。なお,これら合法的セクターの価格動向を反映した総合消費者物価指数に対し,「価格上昇と抑圧されたインフレを考慮に入れたインフレ率は,1~9月期前年同期比9%以上」との公表もなされている。こうした中,政府は,91年1月1日より石油,金属,木材,機械類等,1,500品目の卸売価格の大幅引き上げを実施した。この結果,小売価格引き上げが実施されなければ企業補助金支出増大により財政の更なる悪化は避けられず,早晩,小売価格引き上げは避けられないとみられている。


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