平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第6章 イタリア:景気はやや減速へ

3. 生産・雇用

(1)鉱工業生産

89年の鉱工業生産は年前半に減少し(89年1~6月期前期比0.3%減),その後後半には盛り返し(89年7~12月期同3.5%増),全体としては前年比3.1%増となった(第6-2図)。90年入り後は振幅はあるものの,総じて緩やかに鈍化しており,90年1~6月期前期比1.8%減,7~9月期同2.1%増となっている。

財別生産動向をみると89年は資本財が前年比2.6%増(88年同10.9%増),中間財同3.4%増(88年同5.5%増),消費財同2.8%増(88年同5.4%増)となっている。90年に入ると資本財が高水準の生産を維持している一方,中間財,消費財の生産は低下気味で推移している。

製造業新規受注動向をみると,89年は前年比9.4%増となり,そのうち輸出向けは同7.7%増,国内向けは同10.1%増となった。90年に入ると輸出向け,国内向けとも機械,自動車等を中心に鈍化してきているが,4月以降国内向けが低下しており,イタリア国内景気の減速を示す指標の1つとなっている。

(2)雇用情勢

雇用情勢は80年代を通じて失業率が高まる等厳しい状況にあったが,89年にはやや改善がみられた(第6-2表)。

失業率は87年以降12%で横ばいとなっていたが89年7~9月期に12.2%でピークとなった後,90年4~6月期には10.8%にまで低下する等改善がみられた。しかし,その後7~9月期10.9%,10~12月期10.9%とこのところ高水準横ばいとなっている。男女別の失業率をみると87年以降,男子の失業率はほぼ8%台で推移していたが,女子の失業率は18~19%と男子に比べかなり高い水準となっている。その要因としては,女子の労働力人口が86年に大幅増加した(22.5万人増)後も増加傾向が続いていることが考えられる。また若年層(14~24才)の失業率にはほとんど改善がみられず30%台の高失業率となっている。

雇用者数は87年より増減を繰り返しているが,90年に入ってからは前年同期比で増加が続いている。90年全体では2,130万人となり,目覚ましい改善とはいえないものの前年比1.4%増となっている。業種別雇用者数の動向をみると,89年には農業(前年比5.5%減)及び小幅ながら鉱工業(同0.5%減)で減少する一方,サービス業で増加(同0.4%増)が続いた。90年に入ると4~6月期まで,すべての業種で増加していたが年全体でみると,農業は減少(前年比1%減),鉱工業は年後半に減連したものの増加(同1.3%増),サービス業は好調な伸び(同2.1%増)となっている。男女別雇用者数の動向をみると,88年から89年にかけて男子雇用者数が減少しているのに対し,女子雇用者数は増加傾向が続いている。なかでもフルタイムの女子が順調に増加しており,パートタイム就労者をみてもこのところ女子の比率が高まっている。

雇用情勢全般を地域別にみると,失業率は北部では順調に改善し,89年には6%(うち男子3.4%)となっているのに対し,中央部では10.7%,南部では21.1%とむしろここ数年高まっている。雇用者数も北部ではサービス業を中心に増加傾向にある一方で,中央部,南部ではサービス業の増加にもかかわらず,鉱工業または農業の減少から全体として86年以降ほぼ横ばいとなっている。


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