平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第5章 フランス:増勢やや鈍化ながら景気は堅調

3. 生産・雇用

(伸びが鈍化した生産)

鉱工業生産は,89年に力強い拡大(前年比3.6%増)を示した後,90年に入り,1~3月期は2~3月の暖冬の影響によるエネルギー生産の大幅な落ち込みにより,前期比0.8%減となった。4月は,季節はずれの寒波の影響でエネルギー生産が急増したが,乗用車,中間財部門での落ち込みにより,4~6月期では前期比1.5%増(前年同期比1.0%増)と低い伸びとなった。7~9月期には,中間財,資本財,消費財等が伸びたものの,前期比1.7%増(前年同期比2.3%増)と依然としてやや低調に推移している。部門別の生産動向をみると(第5-3図),90年1~3月期には,資本財,食料品部門が伸びたものの,暖冬による需要減によりエネルギー部門が大幅に低下した他,非耐久消費財部門も低下した。4月以降は,エネルギー部門が回復し資本財部門も依然伸びているものの,その他の部門はおおむね横ばいとなっており,その結果全体としては伸びが鈍化することとなった。INSEEの生産動向に関するアンケート調査(11月実施)によれば,今後年末にかけて,国外,国内ともに需要の減退が続き,とりわけ資本財部門,乗用車部門で後退し,受注は伸びず,在庫水準が上昇し,生産の伸びは緩やかなものになるものとしている。

(高い水準となっている失業率)

雇用情勢をみると,政府の雇用対策等も加わリサービス部門を中心に製造業,建築部門等,農業部門を除き,全般的に雇用は増加し89年4~6月期1404万人から90年4~6月期1434万人へと増加した。しかし,90年後半には企業の体力強化を目的として,ミシュラン,ルノー,ブル等の大企業において従業員削減が決定されており,失業者が今後増加する可能性がある。失業率は緩やかながら低下しできていたものの,このところの8.9%の水準から,11月には9.0%に上昇し,雇用情勢は依然として厳しい(第5-3表)。

求職者数の動きをみると,87年以来減少傾向にあったものの,このところ下げ止まっている。求職者数は,90年4~6月期に249万人,7~9月期250万人の後,10月252万人,11月254万人と増加した。未充足求人数をみると,90年1~3月期には,前期比9.2%増と大幅に増加したものの,その後は4~6月期同0.9%減,7~9月期同5.7%減の後,10月前月比4.3%減,11月同5.7%減と減少が続いている。

労働争議による労働損失日数は,89年は,9月以降大規模化した公務員関係のストライキの他,プジョー等のストライキの発生により,前年に引き続き800(千日)と高水準となった後,90年に入ってからは,BNP(パリ国立銀行)でストライキが発生した以外目立った動きがなく,1~6月で307(千日)と前年同時期の439(千日)を下回っている。


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