平成元年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1988~89年の主要国経済

第3章 イギリス:景気拡大の減速

3. 生産・雇用

(1) 製造業生産の伸び鈍化

鉱工業生産は8年以上にわたって息の長い上昇を続けてきたが,89年入り後は,石油・ガスなどエネルギーの生産が88年央から低下し,その後の回復が遅れているほか,製造業部門でも伸びが鈍化しており,1~9月の前年同期比0.4%増にとどまっている(87年,88年は各々3.5%,3.6%増加)。製造業では,88年央以降,投資ブームを背景に伸びが高まり,88年6月にようやく過去のピーク時(74年4~6月期)の水準を上回った。しかし,89年に入って,投資財部門では伸びが依然高いものの,消費財部門では大きく鈍化している(89年1~9月の前年同期比5.2%増。うち投資財は,1~8月に同9.8%増,消費財は同3.1%増)(第3-3図)。

一方,北海石油生産は86年7~9月期をピークに減少傾向に転じており,87年2.6%減,88年8.6%減の後,89年には事故の影響もあり1~7月の前年同期比は26.9%減,エネルギー部門全体でも1~9月同12.2%減となっている。

(2) 雇用情勢の引き締まり

雇用者数は83年春以降の増加傾向を維持しているが,鉱工業生産の伸びが鈍化してきていることもあって,89年6月までの1年間では増加数は前一年間と比べて小幅化しており,特に,製造業部門では89年に入って再び減少を示している(第3-3表)。就業者数は83年3月を底に増加を続け,89年6月現在,2,634万人となっている。しかし,過去1年間の増加(47.9万人)のほとんどがサービス部門での増加(26.9万人)によるものであり,自営業主は約12万人増,一方,製造業部門ではこの間に2.3万人減少した。

失業者数は86年7月(313万人)以降減少に転じ,89年12月までにほぼ半減して163万人となった。失業率も,86年8月の11.2%をピークに低下を続けており,89年12月には5.8%と,80年代初の水準まで低下した。しかし,地域間格差は依然として大きく,89年10月現在,北アイルランド15.0%,スコットランド9,4%,南東部3.9%などとなっている。

過去3年以上にわたる失業者数の大幅減少には,政府の雇用対策もかなり影響している。これら各種の雇用対策の対象人員数は,89年8月現在,約60万人(88年8月は88.4万人)となっている(第3-4表)。中心は,若年者の訓練計画で,86年4月以降16,17歳の非進学,非就職の全員を対象としており(89年度約49万人,約12億ポンド),90年度についても約9億ポンドの支出が予定されている(オータム・ステートメント)。このほか,86年4月に発足した再出発計画(Restart Interviews Scheme)は,6か月以上の長期失業者に職業安定所職員と面接を義務づけるもので,失業者の状況に応じて適切な雇用対策への参加等を助言し,就職を促進することを狙いとしており,89年1~8月の面接者累計は84万人(88年同期は108万人)となっている。


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