平成元年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1988~89年の主要国経済

第1章 アメリカ:軟着陸に向かう

3. 生産・雇用

(1) 増加傾向が鈍化した鉱工業生産と頭打ち気味の稼働率

鉱工業生産は,88年前半はおおむね前年同月比6%前後の高い伸びを続け,88年全体では前年比5.7%の伸びとなった。しかし,88年末から伸びが鈍化し始め,89年に入って上半期は前年同月比で4%台の伸びを続けたものの,7~9月は同2%台,10~12月は10月の航空機及び同部品産業のストライキ,カリフォルニアでの地震の影響等もあって同1%台の伸びとなり,このところ増加傾向に鈍化がみられる。産業別の寄与度をみると,非耐久財製造業の寄与はやや縮小したものの,1%台の寄与度であるのに対し,耐久財製造業の寄与は89年に入って88年の3%前後から1%台まで減少し,このところ鉱工業生産の増加傾向が鈍化した大きな要因となっている(第1-7図)。需要段階別にみると,原材料ではエネルギー生産が減少傾向にあり,中間財も建設資材生産の伸びが鈍化している。最終財では,堅調な設備投資や輸出から設備財生産は着実な伸びを続けているものの,個人消費の伸びの鈍化を反映して,自動車生産が10~12月の新モデルの生産計画で前年比10%以上の減少となるなど耐久財を中心に消費財生産の伸びが一層鈍化しており,全体でも伸びは鈍化している。このように89年に入って,個人消費の伸びの鈍化が自動車の販売,在庫,生産のメカニズムを通じて生産の増加傾向の鈍化につながっている。

順調な経済拡大から上昇を続けていた稼働率も89年初には,生産の伸びの鈍化,旺盛な設備投資による生産能力の拡大等を反映してピークを迎えている。

製造業稼働率についてみると,87年初の80%前後の水準から上昇を始め,87年中に82%台まで上昇し,88年中には84%台まで達し,88年平均では83.6%となったが,89年1月の84.7%をピークに頭打ち気昧となっている。このように経済の拡大を受けて稼働率も上昇したが,経済の減速や旺盛な設備投資の生産能力化とともに頭打ち気味となっている。

(2) 下げ止まった失業率と伸びが小幅化した民間非農業雇用者数

雇用情勢をみると,失業率(分母の労働力人口に軍人を含む計数。分子の失業者数は軍人を含んでも含まなくても同じ。)は88年初の5%台後半から88年末の5%台前半へ低下し,88年平均で5.4%となった。89年に入って,3月に73年12月以来約15年振りに4.9%と4%台の水準となったが,その後,5.1~5.3%と下げ止まっている。88年に失業率が低下したのは,経済の拡大に支えられた生産の順調な増加から,サービス業で294.5万人雇用者が増えたほか,製造業でも37.9万人雇用者が増え,民間非農業全体では338.3万人の雇用増となったためである。89年に入って,経済の減速とともに,雇用者数の増加も小幅化し,特に,生産の増加傾向の鈍化等から製造業では4月以降雇用者が減少を続けている(第1-8図)。

雇用者について業種別にみると,サービス業では医療等のその他サービス業,小売業,卸売業,運輸業を中心に88年から89年にかけて順調に雇用者が増加している。一方,製造業では,88年中は,生産の順調な増加からサービス業に比べ増加幅は小さいものの,順調に雇用者が増加したが,89年に入って,生産の増加傾向に鈍化がみられること等から電気機械,自動車等を中心に雇用者が減少傾向にある業種も出てきた。また,一般機械は設備投資と純輸出に支えられて雇用者が増加していたが,89年夏以降おおむね減少傾向にある。


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