昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第4章 西ドイツ:輸出,設備投資が増加

1. 概  観

83年初から始まった西ドイツの今回の景気上昇は,すでに6年が経過しているものの,全体としてみると成長率は低く,失業率も高原状態を続けている。この間,物価は急速に鈍化し,対外黒字は拡大を続けた(第4-1図)。

88年については,輸出の増加や設備投資の回復にともなって比較的高い成長となり,このため,政府の成長率見通しも年初は1.5~2%とされていたが,8月には2.5~3%へ,10月には3.5%へ上方修正された。失業率も夏以降やや改善がみられたが,貿易収支黒字は対ECを中心に拡大した。物価は,原油価格の低下もあって小幅上昇にとどまった。しかし,夏にマルク相場が急落し,輸入物価上昇によるインフレ懸念が生したことから,7月と8月に公定歩合が引き上げられ3.5%となった(第4-2図)。財政面では,景気に対する配慮から,財政赤字の拡大が容認された。

89年については,年初にいくつかの消費税引き上げが予定されており,個人消費の鈍化から成長率も2~2.5%程度に下がるとみられている。成長率の鈍化や,労働力人口の増加から,失業率は依然高水準となることが予想され,経常収支黒字も拡大が見込まれるなど,80年代の西ドイツ経済の問題点は,解決されずに残るとみられる。


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