昭和62年

年次世界経済白書

政策協調と活力ある国際分業を目指して

経済企画庁


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第2章 世界的な貿易収支不均衡-その原因と影響‐

80年代に入って急速に拡大・悪化してきたアメリカの貿易・経常収支の赤字は,日本・西ドイツ等の黒字とともに,80年代半ばには,世界経済にとって容認しがたいほど大きなものとなった。このアメリカの貿易収支赤字は,85年初以来の米ドルの大幅な低下にもかかわらず,人々の予想に反して,ほぼ86年を通じて拡大し続け,86年秋以降やや拡大の停止ないし縮小の兆しがみえるものの,その改善はきわめて緩やかであり,その水準は依然きわめて高い。また,一方では,アジアNICsの貿易収支黒字の急速な拡大といった新たな問題が派生してきている。

保護主義の台頭,累積債務問題の悪化,為替市場・国際金融システムの安定性,さらには西ヨーロッパ等の外需の減少等,アメリカの貿易収支赤字ないし世界的な貿易収支不均衡と関連して語られる世界経済の問題の数は極めて多い。まさに,この貿易収支不均衡問題は,現在の世界経済の問題点の要といってもよいであろう。

本章では,まずアメリカの貿易収支赤字を中心とする世界的な貿易収支不均衡の現状を概観した後,アメリカの貿易収支赤字の拡大及び持続性の原因,為替調整の効果についてマクロ的・ミクロ的に分析し,また貿易収支不均衡調整の日本・西ヨーロッパ経済等への影響や,累積債務問題,保護主義,国際金融システム等への影響についても検討することとする。


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