昭和51年

年次世界経済報告

持続的成長をめざす世界経済

昭和51年12月7日

経済企画庁


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第1部 景気回復下の世界経済

第3章 発展途上国の経済

第1節 発展途上国の経済

75年の発展途上国の経済成長率は前年の6.4%(実質GDP)から2.6%へと大きく鈍化した。しかし,これは主要先進工業国が2年連続マイナス成長であったことからみると比較的高い成長であったと言える。地域別にみるととくに高い成長を示したのは南西アジアの4.4%で次いで東南アジアの4.0%であった (第3-1表)。

このように先進国不況の中で発展途上国が成長を遂げた主因は,農業生産が好調であったことによるものである。しかし,一方では鉱工業生産の鈍化,74年に引続く大幅な貿易収支赤字,そして高率の物価騰貴と各国とも多くの困難に見舞われていた。

しかし,こうした状況も76年に入ってからは農業が引続き順調であることに加え,先進諸国の景気回復及び一次産品価格の反騰から輸出が回復し貿易収支赤字は改善傾向を強め,物価も75年央以降騰勢は徐々におさまっているなど明るさを増してきている。

(好調な農業生産)

発展途上国の農業生産は71,72年と不作が続いたあと73,74年は比較的順調に推移し,75年も天候にめぐまれたことから豊作で,穀物生産は前年比8.0%の増産であった。地域別にみると,アジア(主としてインド等の南西アジア)の農業は大豊作であり,これを反映して75年央以降アジア地域の物価は鎮静化している。

一方,鉱工業生産をみると,74年の6.3%から75年は3.7%の伸びにとどまった。とくに中南米諸国は74年の7.8%から75年は2.9%と大幅に鈍化した(第3-1図)。

76年の生産動向をみると,農業は引き続き好調で,穀物生産は米の生産が前年を若干下回るとみられているものの,全体では前年比4.3%の増産が予想(FAO)されており(第3-2表),加えて,工業生産も先進諸国の景気回復を反映して,75年後半以降回復の動きをみせている。なかでも,アジア諸国の中進的工業国である韓国,台湾は,76年に入ってから著しい成長をみせている。

(物価動向)

一方,72年後半から騰勢の強まった物価は73,74年と二桁の高騰をみせたが,75年も引続き高い騰勢を持続した (第3-3表)。これは,73,74年と石油を含む一次産品価格が高騰したこと,および工業品輸入価格が75年上半期まで高騰したことが大きく影響している。しかし,75年後半から輸入価格が下落傾向に転じたこと,農業の豊作等により物価の騰勢は非産油発展途上国(但し,中南米は特殊, 第3-3表の注)は年初から,また産油国でも第3四半期以降除々に落ち着いている。このうち非産油発展途上国61カ国をみると,二桁の物価騰勢をみせていた国は75年第1四半期には52カ国を数えたが,76年第1四半期には31カ国に減少した。つぎに,貿易動向を中心に,非産油発展途上国と産油国に分けて最近の動きをみよう。


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