昭和50年

年次世界経済報告

インフレなき繁栄を求めて

昭和50年12月23日

経済企画庁


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むすび-回復をめざす世界経済とわが国の立場

(1) 景気回復の曙光

世界経済は不況の底からはい上るために懸命の努力を続けている。先進諸国に始った景気後退は,石油危機の追撃もあって,各国の緊密化した連鎖を通して全世界に広まり,2年にわたる戦後最大の不況に発展した。

この中にあって多くの先進諸国では,74年後半より不況の急速な深刻化がみられ,失業率の記録的上昇が生じた半面,インフレの鎮静化と貿易収支の改善が現われてきた。ここにおいてインフレの重圧が軽減した諸国では,徐々に政策スタンスの変化がみられるようになり,74年末から75年に入って景気浮揚策が相ついで採用された。

最近の状況をみると,アメリカは75年第2四半期の底入れからかなり力強い回復の足どりに移っており,日本も緩慢ながら回復基調にある。西ドイツも回復に入ったことを示す指標があらわれ,フランスもほぼ底入れに到達したものと思われる。このように,世界不況にも現在ようやくその一角に,脱出の曙光が見えはじめるようになった。

この間,EC諸国においては,インフレの激しい一部の国を除いて,協力して景気浮揚策をとる合意が成立したこともあって75年8,9月にかけてイタリア,西ドイツ,フランス,ベネルックス,デンマークでタイミングを合わせた政策実施がはかられた。従来の各国の単独で行いうる政策効果の限界がこれによって切り開かれるかどうかは,なお今後に待つべきではあるが,各国政策協調の実現は,それ自体一つの進展と考えることができよう。

さらに75年11月中旬に行われた主要国首脳会議では,現下の主要経済問題につき多面的な討議が行われ,世界経済再建の決意を表明するランブイエ宣言が採択された。


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