昭和46年

年次世界経済報告

転機に立つブレトンウッズ体制

昭和46年12月14日

経済企画庁


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年次世界経済報告の刊行にあたって

ここに,第9回目の年次世界経済報告を発表します。1971年の世界経済は,イギリスのEC加盟交渉の妥結,アメリカの新経済政策など今後の世界経済に大きな影響を及ぼすとみられる重要な出来事が相継ぐなかにあって,戦後4分の1世紀にわたって世界経済の発展を支えてきたブレトンウッズ体制の危機が重大な問題として表面化しました。本年の年次世界経済報告におきましては,このような観点から,ブレトンウッズ体制の問題に焦点をあて,通貨,インフレ,貿易の3つの面からやや長期的な視点にたって分析しました。まず第1章では1971年の世界経済を回顧し,第2章ではその中で深刻化したIMF体制の動揺を分析し,さらに第3章ではこうした通貨体制の動揺をもたらす原因ともなった先進国のインフレ問題を取扱っております。次に第4章ではガット体制の問題を中心に大きく変貌をとげようとしている世界貿易の構造に焦点をあて,第5章では主要国の経済動向と政策を概観しております。

本報告を作成したあと,71年12月18日ワシントンで開催された10ヵ国蔵相合議において,ドルの切下げを含む多角的通貨調整が実現し,わが国も1ドル=308円の新基準レートを適用することとなりました。もとより,これによって国際通貨問題のすべてが解決したわけではありませんが,こうした国際的合意の原動力となった各国の国際協力が,多元化しつつある世界経済の中で,将来とも安定的な国際通貨制度と自由かつ秩序ある通商関係をもたらすための努力の第一歩として,重要な意義をもっていることは高く評価されるべきでありましょう。

わが国は経済規模の飛躍的な拡大によって今日世界経済に大きな影響を与えるようになりました。こうした中でわが国は,安定的な世界経済の発展を実現していくうえでより積極的な役割を果していかなければならないと思います。

このような観点から,この報告書が世界経済の現状とその問題点について国民各位の認識を深める上での一助となれば幸であります。

昭和46年12月14日

木村 俊夫

経済企画庁長官


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