昭和41年

年次世界経済報告 参考資料

昭和41年12月16日

経済企画庁


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第8章 ソ連および東欧

3. 1965~66年の東欧経済

(1)経済成長

東欧では,65年に地域全体としての工業生産は64年に引き続いて拡大テンポを高め,63年までの成長鈍化傾向から反転したことを示した(第8-10表参照)。とくに東欧の先進国であるチェコでは63年当時の中期計画の中止,経済の調整を反映した工業生産の減少から立直り,65年にはかなりの増加となった。東ドイツやポーランド,ルーマニアでもほぼ同様の傾向がみられ,65年に多少伸び率は低下したものの計画を上回った。ハンガリーだけは工業生産の増加率が目立って低下したが,これは貿易収支改善のため工業原料の輸入が抑えられたことによるのである。

第8-11表 東欧諸国の農業生産

第8-12表 東欧諸国の国民所得

つぎに65年の農業生産をみると,気象条件が概して悪かったにもかかわらず,各国とも穀物の収穫は64年を上回ったが,ブルガリア,チェコ,ハンガリ一では他の農作物の不作で農業生産全体としては前年に比べて横ばいないし減少を示した。これに対し,ポーランドでは64年の停滞を脱し,東ドイツでは前年に引き続いて好調を示した模様である(第8-11表参照)。

以上のような工業および農業生産の動きを反映して,65年の国民所得の伸び率は,チェコで低率ながら64年のそれを上回ったほかは,各国とも前年より低下した。とくにハンガリーは工業および農業とも不振で成長率は64年に続いてさらに低下した(第8-12表参照)。

66年の計画は,これを工業生産についてみると各国ともその増加率は65年実績より低く予定されている。このことは,一つには多くの国で中期計画の最終年次としての65年に建設事業が完了して生産の拡大が大幅であったことまた第二には各国とも経済管理制度の改革にともなって生産の量より質を重視する傾向が生まれ,これが66年計画に現われたことによるものとみられている。

この経済計画および管理制度の改革は,原則的にはソ連における改革と同様の内容であるが,その発足はむしろソ連に先行している。改革への動きは1956~57年にポーランド,ハンガリーに始まり,現在ルーマニアを除く東欧各国で改革が進行している。とくに経済発展の進んだ東ドイツとチェコではすでに改革の基本方針が確立されて,実行に移されており,その他の諸国でも実験から本格的な実施の段階にはいりつつある。今後の東欧諸国の経済成長はこの改革の成否いかんによるところが多い。

第8-13表 東欧諸国の貿易

第8-14表 OECD諸国の対東欧貿易

(2)貿易の動向

東欧諸国の貿易は,65年にブルガリアで輸出が前年に引き続いてさらに増加率が大幅になり,ポーランドの輸入増加が目立ったほかは,他の諸国では経済成長率の低下に対応して貿易の伸びが概して小幅となった。また貿易収支の面では,さきに述べたように,ハンガリーで収支改善策がとられた結果東欧貿易赤字がいちじるしく縮小し,ブルガリアとルーマニアで64年の入超が小幅ながら出超に転じたが,その半面ポーランドでは収支の悪化がみられた(第8-13表参照)。

全体としての貿易の伸びが縮小したなかで,西側諸国とくに先進国との貿易は概していちじるしい増加を示し,66年にはいってからもその傾向が続いている(第8-14表参照)。65年における東欧各国の輸出入合計額に占める対西側貿易の比重は,西側との経済交流に最も積極的なポーランドとルーマニアで約35%と高く,ハンガリーの30%余がこれに次ぎ,東欧の工業国としてコメコン体制との結びつきの強い東ドイツとチェコが26%,低開発国としてソ連をはじめ東欧圏内への依存度の高いブルガリアが23%と比較的小さい。このような対西側貿易の比重は,前述のような最近における東西貿易の著増によって大きく変ろうとしている。


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