昭和40年

年次世界経済報告

昭和40年12月7日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

第4章 フランス

1. 1964~65年のフランス経済とその特徴

1964年央~65年央のフランス経済は,軽い不況局面にあった。だが,そのなかに,64年の後退から65年の回復という,景気局面の転換がみとめられる。

すなわち,1962~63年の消費ブームの過程でフランスはかなり激しい物価騰貴と貿易収支悪化を経験し,これが63年秋の「安定計画」(物価安定,経済引締め,経済体質改善をめざした総合政策)の実施をもたらした。この影響はかなり早期にあらわれ,卸売物価は63年末をピークにその後ほぼ横ばいとなり,消費者物価の騰勢も月0.2%程度の上昇率に鈍化した。ついで生産も64年第2・四半期以降減少をみるにいたり,また対外面でも,この生産活動の収縮から輸入が横ばいになった反面で輸出が増勢を続けたため,貿易赤字は縮小しはじめた。

65年にはいると,生産は前年水準を下回りながらもゆるやかな回復をみせはじめ,6月には前年同月の水準に達した。しかもこの間,物価は前年どおりほぼ安定し,貿易収支は輸出好調から前年来の好転の度を強め黒字化した。これにより,政府は4月以降「安定計画」の部分的な解除,すなわち景気刺激策に移り,秋以降は在庫再蓄積の開始もあって,本格的な回復ないしは再拡大と予測するにいたっている。

この1964~65年の停滞局面,あるいは厳密にいえば64年央~65年央の不況局面は,ピネ引締め政策による1952~53年のリセッション,ピネ・リュエフ引締め政策による1958~59年のリセッションに続く戦後3回目のものであるが,これを前2回と比べてみると,第4-1図のように,つぎのような特徴がみいだされる。

第1は,工業生産の落ちこみが小さく,その回復も早くはじまっているが,その反面でその回復のテンポがゆるいことである。第2に,賃金,物価(消費者物価)が,それに先だつブーム時に比べれば鈍化したとはいえ,かなりのテンポで上昇を続けている。もっとも,その騰貴はリセッション時にも続いた物価高騰が為替レート切下げをひき起こした1958~59年のそれほど激しくはないが,52年のリセッション時よりかなり高い。第3に,対外面では輸入が高水準横ばいを続け,落ちこみを見せなかったこと,輸出が当初より好調を続けたことが指摘される。

このような今回のリセッションの特徴はさまざまな意味あいをもつが,ここでさしあたり安定計画との関連で,つぎの諸点に注意しておく必要があろう。

すなわち,まずフランス経済が深刻な不況を招かないで,インフレ,貿易赤字という経済不均衡ないしは緊張をいちおう解消しえたということである。これは安定計画の目標のひとつが,できるだけ生産活動をおとさないで,物価・賃金の騰貴を抑制するというところにあったことからすれば,フランスの短期的景気政策の成功を物語るものといっていい。

だがこの成果の半面で,景気調整がある程度不十分なものに終わり,つぎの2点で問題が残った。第1は,インフレ体質の改善,フランス工業の国際競争力の強化という安定計画のもう一つの課題がほとんど果たされなかったことである。65年にはいってからの景気刺激策の実施にためらいがみられ,あるいは景気刺激と並行して物価凍結措置がなお継続されるとともに,金融・財政機構の改革,企業合同の促進,流通機構の近代化などの経済体質改善策が多面的にとりあげられつつあるのはそのためである。第2は,生産の後退は軽微に終わ,ったけれども,回復のテンポがゆるやかで,今後のフランス経済の成長力に危惧がもたれるにいたったことである。なかでも,62年以降年を追って停滞の度を加えてきた民間企業設備投資の不振が問題であり,ここから経済構造改善策もさることながら,もっと景気刺激策を強化すべきではないかとの批判が国の内外から生じた。

第4-1図 戦後3回のリセッションの比較

2. 1965年のフランス経済

(1)生産と雇用

第4-1表で経済成長率(国内総生産の前年比実質増加率)をみると,景気後退の年であった64年は5.7%と前年よりかえって成長率が高まり,回復の年の65年のそれは2.3%(政府予測)と低下している。だが,これはいうまでもなく,成長率が年次データであることによるもので,経済拡大の実態をあらわしていない。64年の成長率が高くあらわれているのは,63年中経済拡大が続き,64年初の水準は63年平均のそれよりかなり高かったことに加え,農業生産が豊作に恵まれたことによる。これに対し65年の回復は,64年平均より低い状態から出発しての経済拡大であった。だが,それにしても,65年の成長率2.3%は比較的に小さいものであり,しかもこの数字の達成には,上期の実績からいって下期に8%程度の工業生産の急上昇を必要とするのである。

この経済拡大の弱さは,第4-1表からもある程度よみとれるように,個人消費需要および民間企業投資の鈍化ないし停滞が65年にも続いていること,あるいは64年よりも強まってさえい込ことに起因する。これに対し家計部門の資本形成(住宅),政府支出,公共企業投資,輸出は,65年にも急速な拡大を続け,概して前年より増加率が高まっている。これらが,消費・投資の国内需要の弱さをカバーし,1964~65年の景気調整期における生産の急激な収縮を防ぐとともに,当面の経済再拡大の主柱をなしているのである。

この間の事情は,鉱工業生産の四半期別推移にもあらわれている。すなわち,工業生産は64年第2・四半期をピークにその後微減したものの,65年第1・四半期をボトムに早くも回復しはじめているが,この過程は,部門によりかなり様相がことなり,建築,基礎資材部門の生産は拡大を続けたのに対し,最終需要部門はかなり減少をみせたのち,ゆるやかな回復という形をとっている。

なかでも設備財工業の不振のほか,自動車・テレビなどの耐久消費財の生産不振,ついでは繊維工業の不振が目だち,乗用車生産のごときはしだいに回復をみせているとはいえ,65年第2・四半期はなお前年同期を10%近く下回っている。

また,65年における経済拡大の弱さは雇用面にもあらわれている。季節調整数字でみると,求人数は年初来低水準で横ばいないし微減,求職者数は増大している。秋にいたっても雇用事情はさしたる好転をみせていない。またこのため,64年央来の賃金騰貴の鈍化傾向も続いており,65年上期の上昇率は2.9~3.0%(64年上期3.9%,63年上期4.4%)にとどまった。

第4-1表 フランス国民経済計算の変化

(2)個人消費

64年にはじまった個人消費の増勢鈍化傾向は,65年にはいっていっそう強まった。65年の個人消費は2.4%増(政府予測)にすぎず,これは1人当たりにすると1.2%の増加にすぎない。もっとも65年内の動きとしては,第1・四半期の沈滞ののち,春以降はやや回復というかたちである。

個人消費の不振の原因には,①賃金上昇の鈍化と操業時間短縮からする賃金所得の鈍化のほか,②物価安定と景気先行きに対する警戒心がもたらした貯蓄性向の上昇,③住宅購入の負担増,などがあげられる。

消費の鈍化はほとんどすべての部面にみられるが,第4-2表にみられるように,なかでも耐久消費財が家計の買いびかえの対象になっており,電気冷蔵は64年に比べ10%減,テレビ,洗濯機は5%減とみられている。また乗用車についてはINSEEの消費者購入意向調査によると,ルノーのモデル・チェンジおよび消費者信用の緩和などもあって下期には新車購入の増大をみるものの,年間としては前年比4%減にとどまると予測されている。こうした耐久消費財需要の不振,とくに乗用車のそれには,上にあげた諸原因のほか,63年まで数年にわたる自動車ブームで車齢構成が若くなり,自動車保有世帯数もかなり高い水準まできたことによる一種の循環的需要停滞という要因もはたらいているようである。このほか,衣料の購入も停滞しており,食料品購入にも鈍化がみられるが,これに対し,諸サービスとくに保健衛生関係の支出はあまり衰えていない。

だが,こうした反面,自動車ブームに代わって登場した住宅ブームはなお続いている。所得増と貯蓄の増大という基盤のうえに,アルジェりアからの引揚げという特殊条件,さらには政府の住宅金融の強化が加わり,63年以降個人(家計)の住宅購入支出はいちじるしく増大してきたが,65年にも家計部門の投資(おもに住宅)は18%増と,64年のそれを上回る増大をみせている。これによる住宅建築の著増(64年24%,65年も20%近い)が輸出の好調,政府投資の増大とともに,生産の落ちこみを防ぐ主要なモメントとなってきたことはすでに指摘したところである。もっともこの住宅ブームにも,アルジェリア引揚げという条件もやがて消滅するほか,最近では不動産価格の急騰,高級住宅・高級アパートの過剰がみられるといった点から,先行き懸念がでてきているようである。

第4-2表 個人消費の推移

(3)企業投資

65年の企業投資(粗固定資本形成)は3.3%増にとどまり,その増勢はいちだんと鈍化した。なかでも民間企業投資の生産的投資の停滞がいちじるしく,65年のそれは前年程度にとどまっている。これに対し,公共企業の生産的投資は64年に続いて8%をこす拡大テンポを維持しているほか,企業部門の住宅投資-おもに賃貸住宅-も活発であり,これが国内投資活動の極端な低下を防いでいる。

民間企業の生産的投資の鈍化傾向は62年半ば以降のことで,すでに足掛け4年越しであるが,65年にはついにまったくの停滞に陥った。これまで鈍化の主因であった民間工業部門の投資が前年比減といっそう沈滞の度を加えたうえに,64年までは好調であった石油,建築や農業,サービス部門の投資も鈍化するにいたったからである。この投資停滞の原因は,①賃金コスト増などからする利潤率の低下,②需要に比して十分な供給能力の存在,③景気先行きに対する不安感などに求められる。とくに安定計画後は,一方で生産者価格が凍結されているのに,賃金上昇が続き,しかも生産が縮小したことが利幅の低下を招いたこと,また,鈍化してきていたとはいえ,水準としてはかなり高い投資が行なわれてきただけに,その稼働開始と需要不振が設備過剰をもたらしたことが大きい。

他方,公共企業の生産的投資は63年に急増したのち,国鉄,ガス,電力,郵便・通信,原子カエネルギー関係など,ほとんどの部門で高い増勢を維持している。これは企業以外の政府の資本形成-道路,学校など-をふくめて社会資本投資の拡大が第4次計画の主眼点だったことによる政策的努力によるものである。なかでも,相つぐ公共料金引上げによって公共企業の財務状態がいちじるしく改善されていることが注目される。50年代にあっては公共企業の赤字がいちじるしく,これが財政への大きな負担となっていたが,最近では投資の自己金融比率が年を追って高まっており,財政負担も相対的に縮小してきている。この間,民間企業は,自己金融比率を低下させ,投資に当たっての金融難を増してきているのと対照的である。

なお,道路,学校,病院などの政府部門の投資は,中央政府,地方自治体ともに活発である。これに対して中央政府の消費的支出,すなわち,俸給・賃金支払,財貨購入,社会保障支出などは安定計画以降,財政引締め,財政赤字解消の政策により鈍化し,経済にかなリデフレ的影響を与えている。

第4-3表 企業投資の動き

(4)物  価

すでに最初に指摘したように,物価はほぼ安定しているが,潜在的な上昇圧力はなお強いとみられている。

卸売物価は63年の4.5%上昇,64年の2.8%,65年の1.8%(予測)としだいに安定の度を強めてきたが,これはとくに工業製品生産者価格が,一方における安定計画の物価凍結措置と,他方における経済活動の沈滞化から横ばいに近い状態になったことによる。これに対し,農産物は野菜・肉類の騰貴から,またサービス価格は国鉄・郵便・通信の料金引上げから,かなりの上昇をみせている。

消費者物価は64年はじめ以降月0.2%程度のじり高を続けているが,第4-2図にみるように,費目による上昇率はかなり異なり,医療費・家賃・観劇料金などの諸サービス価格,それに野菜・果実・牛肉など農産物価格の上昇が大きい。

このように物価はいちおう落ちついているものの,農産物価格,公共料金をふくめた諸サービス価格といった構造的物価上昇要因がいぜんとしてはたらいているほか,生産者価格凍結措置解除のさいの反動的上昇も懸念される。

第4-2図 消費者物価の上昇率

(5)貿易と国際収支

フランスの貿易バランスは,62年半ば以降64年央まで悪化の一途をたどった。しかし輸入が64年にはいってから高水準横ばいになった反面で輸出の増大が続いたため,64年半ば以降しだいに貿易収支は改善され,65年にはいっては黒字を出すにいたっている。

このうち,フラン圏内貿易は縮小傾向にあり,しかも輸出入はバランスしているため,こうした貿易バランスの悪化から改善へという変化はもっぱら外国貿易でもたらされたものである(第4-3図参照)。

輸入の落ちつきは当初64年前半は,63年に急増した燃料の反動的輸入減によるものであったが,同年半ば以降は原材料輸入の減少に工業品輸入の鈍化が加わっており,国内生産の停滞を主因とするものになっている。だが生産の減少に輸入の減少が伴わなかっためは,冒頭に指摘したように,今回はじめてのことである。これは工業製品輸入が消費財のみならず,工業設備材についても鈍化したとはいえ増大を続けたことによるもので,主としてEEC経済統合による自由化の影響とみられる。

輸出好調が景気調整の当初から続いたことも今回のリセッションの特徴の一つであるが,地域別にみると,西ドイツ,アメリカへの輸出増大が,イギリス,スイス,ベルギー,イタリア,日本などの輸入需要の鈍化ないしは減少を補って余りある効果を与えている。とくに西ドイツ経済の好景気の影響は大きく,またアメリカの経済拡大もアメリカ向け輸出を増大させただけでなく,間接的にフランスの低開発国向け輸出の増大にも貢献した。ソ連,東ヨーロッパ向け輸出も増大している。

フランスの国際収支は62年央以降の貿易収支悪化過程でも黒字を続け,65年にはいってもなお金・外貨準備は増大を維持している。しかしその黒字内容にはかなりの変化がみとめられる。すなわち,第1に,64年までは黒字はおもに資本流入(アメリカ資本およびアフリカからの資本引揚げ)であったのに対し,65年にはいってはその資本流入がやや鈍化した反面で,貿易収支が黒字要因として登場した。第2に,旅行・観光のバランスが1961年以降黒字縮小傾向にあったが,それが65年には黒字要因であることをやめそうになったことである。

西ヨーロッパの観光ブームがフランスなどからスペイン,イタリアなど南ヨーロッパに中心を移したほか,フランス人の国外旅行が急増していることによる。

なお,フランス政府は65年上半期に保有外国為替の金兌換を意識的にすすめ,金・外貨準備高に占める金の比率を高めたが,このいわゆる金攻勢は,他方におけるフランス独自の国際通貨制度改革案と相まって世界の注目を集めた。

国内経済との関連では,64年には外資流入,とくに短資流入が急増して,安定計画による金融引締めを緩和する要因となったのに対し,65年にはいると,その外資流入の鈍化に,国内金融のゆるみとが相まって,そうした役割を減じてきていることが注意されよう。

第4-3図 フランス外国貿易の推移

3. 安定計画の修正と経済見通し

このような経済動向のうちにあって,フランス政府は,安定計画の部分的解除あるいは景気刺激策と,経済構造改善策の実施,この二面を中心とした経済政策を展開した。

安定計画の解除による景気刺激策は,①4月の公定歩合引下げ(4%→3.5%)にはじまり,ついで,②6月末には銀行貸出し制限の緩和(10%増加枠はすえおくが,一部銀行の貸出し超過に対するペナルティの廃止)と,賦払信用制限の緩和(許容貸出し枠の拡大と賦払期間延長)という金融緩和措置がとられた。また,財政面では,③法人税・配当課税の軽減(65ないし66年から実施),④10月に10億フランの国債を発行してこの手取り金を公共企業・民間企業の生産的投資および企業合同のために貸しつける,といった投資刺激策が打ち出された。もっとも財政面からの刺激策はこうした選択的投資刺激にとどまり,財政支出の圧縮,財政赤字の解消という一般的な財政引締めは引き続き実施されたままであった。なお,物価凍結措置も解除をみなかった。

他方,経済構造改善策としては,①付加価値税の簡素化と一般化(中小企業と流通部門の合理化に資する),②食肉市場の合理化(ト殺場の経営合理化と衛生管理の強化),③不動産金融の強化(住宅建築の促進)などの措置があげられる。このほか,上に述べた投資刺激策も,たとえば法人税・配当課税の軽減は資本市場振興策として,また国債発行は企業合同促進策として,多分に経済構造改善策の意味をもあわせもったものである。

これら65年のフランス経済政策の特色は,つぎの2点にもとめられる。第1に,積極的な景気刺激策を避けたことである。金融緩和措置も経済再拡大を誘導するよりはむしろ追随するものと説明されており,投資刺激策も部分的なものにとどまり,消費刺激には格別の措置がとられていない。これは物価上昇圧力がなお存続しているということのほか,ことさら刺激策をとらないでも経済の再拡大に心配がない,という状勢判断にもとづいたものである。第2に,それよりも当面の課題は長期的な意味でのフランス経済の体質改善,とりわけようやく本格的な統合段階にはいる共同市場への適応に努力すべきだという観点から,諸面での構造改善に意識的な努力が払われたことである。なかでも,第4-4表にみるように,フランスの企業規模が一般的に西ドイツ,イタリアなどに比べて小さいところから,企業合同・集中の促進による競争力強化に重点がおかれている。

最近,ドゴール大統領が,フランス経済の拡大はあくまで,①安定の維持,②合理化・集中の促進,③輸出の増進の3点に留意したものでなければならない,といっているのは,こうした当面のフランスの経済安定の特徴を明らかにするものといえよう。

このようなフランスの経済政策は,フランス内部からだけでなく,外からの批判をもよび起こした。すなわち,OECDは8月初めに発表された対仏経済年次審査で,フランス経済の自動回復力には,投資,住宅建築,輸出,消費の各面で問題や不確実さがあり,生産の本格的拡大がみられない場合には,金融面からのいっそうの投資刺激策のほか,消費者減税,社会保障の引上げなどの消費刺激策,さらには公共支出の一般的拡大が必要となろうと勧告した。

そこで,66年度予算の作成が注目されていたが,9月に閣議決定をみた政府予算案は,①予算赤字は引き続き出さない,②歳出増は7%(64年10.6%,65年6.9%)で,66年の国内総生産の増大6.4%にほぼみあう,③重点は投資(9.1%増)におき,民事行政費は7.1%,軍事費は5.6%増にとどめる,というもので,63年末「安定計画」以来の財政引締め基調を継続するものであった。成長率6.4%(実質4,5%)では第5次計画(1966~70年)の平均実質成長率5%に達しないが,成長をある程度犠牲にしても,まず安定,さらには体質改善・国際競争力強化を,という政策態度を,66年も堅持しようとしているわけである。

ともあれ,以上みてきたような経済動向と現在の政策からすれば,66年のフランス経済は,さほど活気のない,ゆるやかな経済拡大ということになるであろう。政府見通し(第4-1表参照)にみられるように,これまで景気の支持要因であった公共企業投資(6.6%増),政府投資,輸出は引き続き高い増加率を保つであろうが,住宅建築が鈍化するほか,個人消費,民間企業投資は回復するとはいうものの,そのテンポは鈍いと思われるからである。とくに問題なのは民間企業投資の動向であって,政府は,年間としての増加率は3%強にとどまるものの,66年内に民間投資は本格的な再拡大に移るだろうと楽観的な観測であるのに対し,INSEEの7月の調査では,66年の民間企業投資は65年程度にとどまろうとの結果がでており,もし民間設備投資の回復が遅れるようだと,直接・間接の投資刺激策がさらに必要となることも考えられる。

第4-4表 フランス,イタリア,西ドイツの企業規模の比較


[目次] [年次リスト]