昭和38年

年次世界経済報告

昭和38年12月13日

経済企画庁


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第2部 各  論

第4章 国際商品の動き

5. 国際商品協定の問題点

一次産品問題に関する対策として,従来から行なわれているものに各種の国際商品協定があり,現在,砂糖,小麦,すず,コーヒーについて実施されている。国際商品協定が,一次産品価格の安定を通じて低開発国の貿易に果してきた役割りは無視できない。しかし生産国と需要国もしくは,生産国相互間の利害を根本的に調整することは困難であるし,また,協定によっては,そのカバーする範囲が当該商品の世界貿易の半分程度にしかならないこと,協定は3年ないし5年ごとに更新されるが,その間の客観情勢の変化に十分応対できないことなどの問題がある。

(a)砂糖協定

まず砂糖協定についてみると本協定ではEEC諸国,英連邦,アメリカなどの特恵関係による買付けは適用範囲から除外されており,本協定の対象となる自由市場は世界の砂糖貿易の4割にすぎないとみられている。すでにのべたように1960年7月アメリカはキューバから砂糖の買付けを停止した。このためキューバ政府は従来アメリカに特恵関係で売却していた砂糖の供給先を転換する必要に迫られ1962年秋の国連砂糖会議で輸出割当額の大増額を申請した。しかしこの要求は各国の認めるところとならず,その結果1962,63年の各輸出国に対する砂糖割当はついに決定をみることができなかった。このように砂糖協定の機能はいわば麻痺したかたちのまま,1963年12月の有効期限を迎えることとなったのであるが,しかし,その存続の必要は多くの国で認めるところであり,1963年7月の国連砂糖会議でさらに2カ年の延長が決議された。

(b)すず協定

すでに個別商品の項でのべたごとく,1963年6月のすず相場上昇に際して,緩衝在庫当局の手持すずはきわめて不十分なものであり,在庫当局の無力を見越した投機筋の買圧力によって相場の急上昇を招いた。事態はGSAの放出計画倍増によって一応おさまり,国際すず理事会(ITC)もこの計画を賛意をもって迎えたのである。しかし他方,世界のすず生産国は,鉱石品位の低下による生産コストの上昇のため,安定価格帯の引上げを強く望んでおり,上記のようなGSAおよびITCの行動は,生産国とくにボリビアの不満をかうところとなっている。

(C)コーヒー協定

1963年7月,消費国を加えて新たに発効した新国際コーヒー協定は,従来の生産者だけの協定から大きく前進したものといえる。しかし最近のコーヒー情勢は,さきにのべたようにアフリカ産ロブスタ種が世界市場での比重を高めつつあるのに対し中南米産アラビカ種は停滞という様相を呈していた。このため,63年7月開かれた新協定最初の国際コーヒー理事会では,中南米諸国とアフリカ諸国が役員選出,輸出クオータの決定をめぐって対立,難航をきわめ,アメリカ妥協案によってようやく妥結点に達した。

(e)国際ココア協定

国際ココア協定についてもここ数年来,FAOココア研究グループによって草案が検討準備されており,63年9月,協定作成のため国連会議が開かれた。しかし,会議は価格問題をめぐって消費国と生産国の意見が対立し,合意をみるにいたらなかった。


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