第1部 総　　論

序　　言

世界経済は,昨秋に一部で懸念された景気の一時的後退ないし停滞を経験することなく,ゆるやかな成長をつづけた。この傾向は1964年にも持続し,世界全体として景気上昇の期間がかなり長くなるものと期待される。

しかし,このような成長過程において,多くの問題があらわれている。西欧諸国においてとくにはげしくなった賃金・物価の上昇,アメリカの国際収支悪化と国際流動性増強に関する問題,欧米諸国問およびEEC内部における対立関係の表面化,低開発国の輸出促進に関する問題など,国内経済や対外経済関係に多くの不均衡がみられるようになった。

そこで本報告では,世界経済の現状を分析するとともに,とくにこれらの諸問題をとりあげ,その背景,特色を明らかにし,あわせて,これと日本経済との関連を考察し,世界経済のなかで日本経済の進むべき方向に関する示唆をあたえることに努めた。