昭和33年

年次世界経済報告

世界経済の現勢

経済企画庁


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第十一章 最近のラテン・アメリカ経済

五 外国資本

ラテン・アメリカ諸国は,資源が豊富で,人口の増加率がめざましい。しかし,国内の資本蓄積はまだ小さい。外国資本の流入によって,設備投資を活発化し,経済開発と工業化を促進する必要があるとし,各国とも,外国資本の進出を歓迎している。

ラテン・アメリカの国民一人当りの国民所得を毎年二%引上げるには,外国資本の流入が毎年二〇億ドル必要と,国際復興銀行の専門家が一九五四年に述べている。また一九五六年にラテン・アメリ力経済委員会の報告では,一九四五年から一九五一年の間にみられた経済成長率を維持するためには,年間二〇ないし三〇億ドルの外資流入が必要であるとの結論を出している。

ところが,一九五〇年から一九五三年の間に,ラテン・アメリカ諸国に投下されたアメリカ資本は平均約五億ドルで,これに平均約一億ドルとみられるヨーロッパその他諸国の投資額を加えても,前述の目標をはるかに下回っている。

その後のアメリ力のラテン・アメリカに対する民間資本投資高をみると,一九五四年五〇一百万ドル,一九五五年三九百万ドル,一九五六年八二六百万ドル,一九五七年一,二九九百万ドルと急増した。このうち,民間長期資本の純直接投資額をみると,一九五四年一〇二百万ドル,一九五五年一四一百万ドル,一九五六年六一二百万ドル,一九五七年一,〇〇八百万ドルで,まだ目標に遠い。

戦後不振だったヨーロッパのラテン・アメリカ投資熱も,一九五六~五七年あたりから復活しはじめ,特に西ドイツのブラジルに対する投資,イギリスのアルゼンチンに対する投資がめだってきた。日本も近年,ブラジルを中心に,メキシコ,アルゼンチン,エル・サルバドルなどに対し,繊維,機械,製鉄業などに若干の投資を行った。一九五七年末現在のわが国の中南米投資額は六二百万ドルにのぼっている。

ラテン・アメリカに対する外国資本の投下は一九五七年にようやく活気を示したが,米国景気後退,西欧経済活動の鈍化,ラテン・アメリカの経済停滞が同時に起ったため,一九五八年の外国資本の流入は,減少が予想されている。

戦後のラテン・アメリカに対する外国投資の特徽は,アメリカ資本の比重が高まったこと,証券投資が後退して直接投資が中心となったこと,アメリカ直接投資の目標として,ベネズエラの石油開発,ブラジルなどの製造工業投資,パナマに登記されたタンカーおよびその他船舶に対するアメリカの石油および船会社の投資などがめだっている。

ラテン・アメリカに対する外国資本の進出は,資源が豊富で将来は有望であるが,一部の産業国有化やインフレ高進などによる不安定が障害として数えられている。


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