平成3年

年次経済報告

長期拡大の条件と国際社会における役割

平成3年8月9日

経済企画庁


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9. 物  価

(1) 基調として落ち着いた動きで推移した国内卸売物価

(基調として落ち着いた動きで推移した国内卸売物価)

1985年以降の円高,原油安の影響を受けて,国内卸売物価は88年度まで前年比で下落を続けたが,89年度は税制改革の影響などから,前年度比で2.6%の上昇となった。90年に入り,年度前半は落ち着いた動きで推移したものの,後半に入ってからは9月から11月にかけて,湾岸危機の影響等から一時的に上昇率に高まりがみられた。こうした動きを反映して90年度の国内卸売物価は前年度に比べ,1.5%の上昇となったが,湾岸危機による一時的な影響を考慮すれば基調として落ち着いた動きどなった。また輸出物価は,米国等の需要減少を背景とした契約通貨ベースでの電気機器,金属同製品等の値下げなどから前年度比0.5%の下落となったが,輸入物価は,湾岸危機に伴う海外市況高を映じて石油・石炭・天然ガスが大幅に上昇したことから,前年度比5.8%の上昇となった。この結果,総合卸売物価は前年度比1.6%の上昇となった(第9-1図①)。

第9-1図 卸売物価及び消費者物価指数の推移

90年度の動きを四半期ベースの前期比騰落率でみると(第9-2表②),4~6月期の国内卸売物価は,化学製品,電気機器,輸送用機器等が下落したものの,非鉄金属,石油・石炭製品,製材・木製品等が上昇したことにより0.3%上昇した。また輸出,輸入物価は円安の影響を受けて上昇した。これにより総合は,0.8%の上昇となった。7~9月期は,電力の夏季料金適用による季節的要因で電力・都市ガス・水道が上昇したことに加え,湾岸危機の影響から石油・石炭製品も上昇したことにより,国内卸売物価は0.7%の上昇となった。また,輸出,輸入物価はいずれも円高の影響により下落し,総合では保合いとなった。10~12月期は電力の夏季料金の適用期間の終了により,電力・都市ガス・水道が下落したはか,非鉄金属,スクラップ類等が下落したものの,石油・石炭製品,化学製品等の上昇により,国内卸売物価は0.9%の上昇となった。また輸出物価は円高等により下落,輸入物価は石油・石炭・天然ガス等の上昇により上昇した。この結果,総合では0.7%の上昇となった。91年1~3月期は石油・石炭製品,非鉄金属等が下落したものの,プラスチック製品,化学製品等の上昇により国内卸売物価は0.4%の上昇となった。輸出物価は契約通貨ベースでの上昇に加え,円安等により上昇,輸入物価は石油・石炭・天然ガスの大幅な下落等により下落した。この結果総合は,0.1%上昇した。

第9-2表 最近の卸売物価の動き(前期比騰落率)

(引き続き上昇した輸入物価)

輸入物価は89年以降おおむね上昇基調であったが,90年第2四半期から第3四半期始めにかけては,前年同期比上昇率に低下がみられ,総合卸売物価への押し上げ要因としての寄与が縮小した。8月以降では,石油・石炭・天然ガスの上昇等から,上昇率に高まりがみられたが,91年に入り落ち着きを取り戻し始め,91年3月,4月には,総合卸売物価の押し下げ要因として寄与している。

これらの動向の背景には,第一に為替レートが90年第2四半期から第3四半期にかけて円高傾向で推移したことがある。また第二に8月以降では,湾岸危機の影響による原油価格の大幅な上昇がある。さらに第三には,91年に入ってからは,為替が円安傾向で推移する一方で,湾岸戦争が終結に向かうなか,90年末より落ち着きを取り戻しつつあった原油価格の影響等があったと考えられる。

現時点ではいずれの動きもおおむね落ち着きを取り戻しており,すぐに物価上昇圧力を高めるものとは考え難いが,今後の為替の動き,海外商品市況等の動きによっては,国内物価への波及につながる可能性があり,今後も輸入物価の動向には注視する必要がある。

(2) 企業向けサービス価格は上昇

1990年度中の企業向けサービス価格の動向をみると(第9-3図),通信では規制緩和に伴う競争の激化を背景に国内電気通信,国際電気通信などが下落したほか,金融・保険では規制緩和の影響から銀行手数料が下落した。一方,運輸においては輸送需要好調のなかドライバー不足を背景とした人件費高の転嫁などから道路貨物輸送などの運輸が上昇したほか,諸サービスでは建設需要好調を背景に土木建築サービスが,またビル建設の増加に伴う需要の拡大から建物サービス等が上昇した。さらに金利の上昇に伴う資金調達コスト増を受けてリースが上昇したほか,最終処理場の不足や運送費高を反映し産業廃棄物処理も上昇した。また需要が堅調なことから不動産における不動産賃貸が,広告ではテレビCMなどの放送広告等が上昇した。これらの動向から企業向けサービス価格は前年度比3.6%の上昇となった。

第9-3図 企業向けSPIの前年同期比騰落率寄与度分解

(3) 総じて落ち着いた動きとなった商品市況

90年度の国内商品市況の動きを日経商品指数(42種)の月末値でみると(第9-4図),商品市況は建設資材関連等一部商品の需給緩和の影響から7月までは弱含んだ。その後8月,9月は湾岸危機の影響等から強含みとなったものの,10月以降は総じて落ち着いた動きとなり,年度全体でみても総じて落ち着いた動きとなった。

第9-4図 国内商品市況の推移

四半期別の前期比騰落率をみると,90年1~3月期に上昇に転じた後,4~6月期は為替円安などを背景に非鉄,木材等が上昇したことから総合指数は上昇した。7~9月期は湾岸危機の影響による石油の上昇があったものの,為替が円高傾向で推移したことに加え,米国の景気後退懸念を背景とした海外市況の軟化などから非鉄等が下落したことから,総合指数はほぼ横ばいとなった。

10~12月期は石油が落ち着きをみせる一方で,原油価格上昇の波及を受けた化学で上昇がみられたものの,前期に引き続き非鉄等が下落したことから総合指数は下落した。91年1~3月期は,非鉄の下落に加え,石油が総合指数の動向に対して下落要因に転じたほか,3月には化学も下落要因となったことから総合指数は前月に引き続き下落した。

91年4月以降については,総合指数でみると非鉄,石油の下落を主因に弱含みとなっている。しかし,景気の成熟化に伴いインフレ圧力は高まりやすい状況にあることから,今後も商品市況の動向に充分注意していく必要がある。

(4) 基調として安定的に推移した消費者物価

消費者物価(全国)の動きを総合指数の前年度比上昇率でみると,89年度は税制改革等の影響などから2.9%の上昇となったのち,90年度は3.3%の上昇となったが,天候要因等による生鮮食品の上昇や湾岸危機による石油3品の上昇などの特殊要因を考慮すれば基調としては安定した動きとなった。

90年度の動きを前年同月比騰落率でみると(第9-1図①),4月から9月にかけでは天候要因等による生鮮食品の上昇などからおおむね2%台後半から3%台で推移した。その後,湾岸危機の影響による原油価格の上昇を背景とした石油3品の値上がりも加わり,10月以降では3%台後半から4%台で:推移したが,91年に入り石油3品の上昇寄与度は縮小しつつある。

特殊分類指数の前年度比騰落率でみると(第9-5表),商品は88年度0.2%の上昇から,89年度は税制改革の影響などから2.3%の上昇となり,90年度は3.6%の上昇となった。一方サービスは88年度1.4%の上昇から,89年度は3.6%の上昇となり,90年度は2.8%の上昇となった。

第9-5表 最近の消費者物価指数(特殊分類)の動き(前期比騰落率)

内訳別にみると,農水畜産物は,生鮮商品が大幅に上昇したために大きく上昇した。工業製品では,耐久消費財がほぼ横ばいとなったものの,物流費,人件費の上昇を事由として食料工業製品で上昇がみられたはか,高級化による価格上昇の影響などから繊維製品も上昇した。一方サービスでは,各項目とも上昇しており,内訳をみると個人サービス料金の上昇率が他の項目と比して高くなっている。


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