平成2年

年次経済報告

持続的拡大への道

平成2年8月7日

経済企画庁


[目次] [年度リスト]

11. 財  政

(1) 平成元年度当初予算

我が国の財政事情は公債残高が63年度末で160兆円に近づくなど依然厳しい状況が続いており,今後急速に進展する人口の高齢化や国際社会における我が国の責任の増大など今後の社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくためには,財政改革を強力に推進し,その対応力の回復を図ることが引き続き緊要な課題である。以上の観点から,平成元年度予算は,平成2年度特例公債依存休質からの脱却と公債依存度の引き下げという努力目標を達成するために,更に歳出の徹底した見直し,合理化等に取り組むことにより公債発行額を可能な限り縮減することとして編成された。一般会計予算においては,引き続き既存の制度・施策の見直しを行い,経費の節減合理化に努め,特に経常部門については,厳しく抑制された。この結果,一般会計予算の規模は,60兆4,142億円となり,前年度比で6.6%増となった。

主要経費別にみるとJエネルギー対策費,経済協力費等が高い伸びを示した一方,食料管理費等が前年度比減少となった。歳入についてみると,経済の好調に伴う税収増等が見込まれることとなったため,特例公債が1兆8,200億円の減額となり,元年度の公債発行額は63年度当初発行予定額から1兆7,300億円下回る7兆1,110億円となった。この結果,元年度予算における公債依存度は11.8%となり,前年度当初予算から3.8%ポイント低下した。

(2) 元年度の財政政策

<1>公共事業の施行状況

平成元年度上半期における公共事業等の事業施行に関しては,経済が拡大局面にあることをかんがみ,景気の動向に応じて適切な運用を図る(自然体)ことを基本とし,目標とすべき契約率等は設定されなかった。

〈2〉元年度補正予算

元年度補正予算は平成2年3月26田こ成立した。この補正予算は,歳出面において,災害復旧等事業費,給与改善等特に緊要となった事項等について措置を講ずる一方,歳入面においては,租税及び印紙収入の増収等を見込むとともに,前年度剰余金の受入れを計上して,あわせて公債金の減額を行うことを内容としている。この補正による歳出総額の増加は5兆8,977億円となり,歳入についでは,租税および印紙収入3兆2,170億円の増収を見込むとともに,特例公債を6,500億円減額することとし,その結果公債依存度は10.7%となった。

(3) 財政資金対民間収支の動向

元年度の財政資金対民間収支は,租税や厚生・国民年金保険料の受入れのほか,国債発行超,外為のドル売り円買い介入等にもかかわらず,交付金や公共事業関係の支払いに加え,国債利払,簡保債券運用が嵩んだため,全体では2兆958億円の払い超となった。この間,国債については,償還増や新規財源債の発行減(特例国債は15年振りに発行なし)にもかかわらず,日銀乗換え停止による借換え債の対市中発行増を反映して,全体ではほぼ前年度(同8,280億円)並みの9,523億円の発行超となった。

(4) 平成2年度予算,財政投融資計画及び地方財政計画

〈1〉平成2年度予算

平成2年度予算は平成2年2月28日に国会に提出され,5月10日に衆院を通過したものの6月7日に参議院で否決された。同日両院協議会が行われたが成案が得られず,憲法の規定により衆院の議決案が平成2年度予算として成立した。

我が国経済は物価が安定する中で内需を中心として持続的な拡大を続けている。また,我が国の財政事情は依然極めて厳しい状況が続いており,人口の高齢化や国際社会での我が国の責任の増大などの課題に適切に対応するためにも財政の対応力を回復することが不可欠である。平成2年度予算は以上の観点から財政改革の第一段階である特例公債依存体質がらの脱却を実現するとともに,公債依存度の引き下げを図るたり更に徹底した見直し,合理化に取り組むこと等により公債発行額を可能な限り縮減することとして編成された。その結果,特例公債依存体質からの脱却が実現された。

(ア)歳入予算

一般会計歳入のうち租税及び印紙収入は前年度当初予算額に対し6兆9,940億円(13.7%)増の58兆40億円,その他収入については,同3,464億円(34,9%)増の1兆3,396億円を見込んでいる。また,公債発行額は前年度当初予算比1兆5,178億円滅の5兆5,932億円となり,公債依存度は8.4%となっている。

(イ)歳出予算

歳出総額は前年度当初予算比5兆8,226億円(9.6%)増の66兆2,368億円となったものの,一般歳出は前年度比1兆2,926億円(3.8%)増の35兆3,731億円と政府見通しの名目成長率5.2%より低く抑えられており,定率繰入実施及び地方交付税交付金の増加が一般会計増加額の8割近くを占めている。主な経費についてみると,社会保障関係費は国民健康保険制度の改革や老人保健制度の基盤安定化のための措置を講じるとともに,すべての国民が安心してその老後を送ることができるよう「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定し,その着実な実施を図るなど,国民に身近な福祉施策についてきめ細かな配慮を行うこととし,一般歳出中最大の伸び額である前年度比7,202億円(6.6%)増の11兆6,148億円を計上している。

文教及び科学振興費については教育環境の整備,生涯学習の振興,共術・文化・スポーツの振興等の施策の充実に努めるとともに,基礎的・創造的研究をはじめとする科学技術の振興のための施策を推進することとし,前年度比1,758億円(3.6%)増の5兆1,129億円を計上している。

公共事業関係費については我が国経済が拡大局面にあることがら,内需の持続的拡大の維持に配慮し,また,社会資本整備の重要性にがんがみ,NTT株売却収入の活用を含めて,一般会計において元年度予算と同水準を維持することとし,前年度比173億円(0.3%)増の7兆4,447億円を計上しでいる。

また,63年6月に策定された第4次中期目標の着実な達成を図る観点から政府開発援助については前年度比618億円(8.2%)増の8,175億円,経済協力費については前年度比506億円(6.9%)増の7,845億円を計上している。

<2>平成2年度財政投融資計画

平成2年度財政投融資計画については景気中立的スタンスを続けるとともに,住宅対策,社会資本整備,国際化の促進,資金還流措置の推進等の政策的要請に対し,重点的・効率的に資金を配分することとされた。その結果,2年度の財政投融資計画は前年度比2兆3,019億円(7.1%)増の34兆5,724億円となり,郵貯,年金,簡保の資金運用事業を除いた一般財投は前年度比1兆2,819億円(4.9%)増の27兆6,224億円となっている。

また,資金配分を使途別分類でみると,住宅に一般財投全体の30.3%の8兆3,659億円を予定し,国民の居住水準の向上に対する強い要望に配慮するとともに,生活環境整備については同15.3%,厚生福祉については同3.1%となっている。

2年度の財政投融資計画の原資としては,2年度計画額に対し2兆19億円(5.8%)増の36兆5,724億円を計上している。このうち,34兆5,724億円につぃては,2年度財政投融資計画の原資に,また,2兆円については,2年度において発行される国債の引受けに充てることとしている。,

〈3〉2年度地方財政計画

平成2年度の地方財政計画は,累積した多額の借入金残高を抱えるなど引き続き厳しい地方財政の状況をかんがみ,おおむね国と同一の基調により策定されている。すなわち,歳入面においては,地方債の抑制に努めるとともに,地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図り,歳出面においては,経費全般について徹底した節減合理化を図るとともに,地域住民の福祉の充実と地域の特性を活かした魅力ある地域づくりを推進するため必要な事業費の確保に配意する等限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹底し,節度ある行財政運営を行うことを基本として策定されている。

2年度の地方財政計画の総額は前年度比4兆3,675億円(7.0%)増の67兆1,402億円となっている。

第11-1表 予算規模の推移

第11-2表 一般会計歳出予算の主要経費別分類

第11-3表 財政投融資計画の使途別分類

第11-4表 地方財政計画


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