平成元年

年次経済報告

平成経済の門出と日本経済の新しい潮流

平成元年8月8日

経済企画庁


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第2章 生活と産業の高度化

第1章でみたように,我が国経済は,「いざなぎ景気」以来ともいえる大型景気の中にある。こうした背景には,円高に象徴される大きな環境変化への適応を終え,我が国経済が新しい段階に入ったことがあると考えられる。近年の我が国経済の大きな流れの一つに高度化がある(第2-0-1図)。

生活面では,多様化,高級化といった形で高度化が進行し,同時にそうした流れが家計支出を盛り上げている。旅行,スポーツ,教養といったレジャー関連支出が多様化の下で増大している。乗用車,家電製品といった耐久消費財支出が高級化の下で増加している。こうした生活面での高度化は,余暇指向の強まり,心の豊かさの追及といった国民の意識変化やマルチインカム世帯の増加などのライフスタイルの変化が背景にある。また,物価安定の下での所得水準の上昇,資産蓄積,消費者金融の普及も生活の高度化をもたらす要因となっている。

産業面では,消費者ニーズの多様化,高級化の下で,高付加価値化,生産技術の高度集約化,情報化の活用,経営の多角化といった形で高度化が進展し,同時にそうした流れが企業活動を一段と活発化させている。とくに,生産技術の高度集約化と情報化は相互に関連しながら,産業の高度化の基本的根幹となっている。こうした産業の高度化は,産業構造の変化をもたらしながら進んでいるが,国内で高度技術集約化した生産拠点が拡充され,産業の空洞化懸念を払拭するとともに,我が国経済の中期的な成長の確保につながっている。

しかし,課題は残されている。労働時間の長さ,内外価格差にみられる物価水準の高さが一例である。これらは,国民生活充実のための課題であるが,同時に産業が取組むべき課題でもある。また一層の規制緩和の推進が必要である。技術革新,グローバル化,業際化の進展等経済社会の変化は既存の公的規制の見直しを迫っている。規制緩和は民間企業の活力を発現させるばかりでなく,国民生活の向上につながるものであるが,公的部門が対応すべき課題の一つである。


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