昭和63年

年次経済報告

内需型成長の持続と国際社会への貢献

昭和63年8月5日

経済企画庁


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11. 財  政

(1) 62年度当初予算

我が国財政を取り巻く環境には一段と厳しいものがあり,我が国経済の着実な発展と国民生活の安定・向上を図るためには,引き続き財政の改革を強力に推進し,その対応力の回復を図ることが緊要となっている。

このような背景の下で,62年度予算は,臨時行政調査会及び臨時行政改革推進審議会による改革方策等の着実な実施を図るなど,特に,歳出面において,経費の徹底した節減合理化を行うことを基本として,その規模を厳しく抑制しつつ,限られた財源の中で質的な充実に配意するとともに,歳入面においても,その見直しを行い,これにより,公債発行額を可能な限り縮減することを基本として編成された。

このため,一般会計予算においては,既存の制度・施策について見直しを行うなど経費の徹底した節減合理化に努め,特に一般歳出(国債費及び地方交付税交付金以外の歳出)については,全体として前年度同額以下に圧縮された。

この結果,一般会計予算の規模は,54兆1,010億円となり,前年度比で0.02%の増加になった。

主要経費別にみると,経済協力費,防衛関係費等が高い伸びを示した。一方,エネルギー対策費,食糧管理費等が前年度比減少となった。歳入についてみると,62年度の公債発行予定額は10兆5,010億円と,61年度補正後発行予定額から9,940億円の減額を行い,この結果,62年度予算における公債依存度は19.4%となり,前年度当初予算から0.8%ポイント低下した。

(2) 62年度の財政政策

〈1〉公共事業の施行状況

62年度の財政政策の推移をみると,62年5月29日,政府は,内需を中心とした景気の積極的な拡大を図るとともに,対外不均衡の是正,調和ある対外経済関係の形成を目的として,6兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策及び所要の対外経済対策を講ずることを内容とする緊急経済対策を決定した。これを受けて,62年6月2日の閣議において,62年度上半期における公共事業等の施行については,物価の安定を確保しつつ景気の維持・拡大を図るため,期末における契約済額の割合が全体として過去最高を上回る80%以上となることを目指して,可能な限り施行の促進を図ることが決定された。

〈2〉62年度補正予算

62年7月24日に成立した62年度第1次補正予算においては,62年5月29日に決定された緊急経済対策の実施等のため,公共事業等の追加(1兆3,584億円)を行うとともに,NTT株式売払収入を活用するため産業投資特別会計へ繰入れ(4,580億円)を行う-ほか,中小企業等特別対策費,政府調達特別対策費,経済協力特別対策費等の補正計上を行った。この補正により,歳出総額は2兆793億円の増額となり,また,歳入については,公債1兆3,600億円の増発を行うこととし,この結果公債依存度は21.1%(当初予算19.4%)となった。

また,62年度第2次補正予算が63年2月20日成立した。この補正予算は,歳出面において,給与改善費,義務的経費の追加,国民健康保険特別交付金等特に緊要となった事項等について措置を講ずる一方,歳入面においでは,租税及び印紙収入の増収等を見込むとともに,前年度剰余金の受入れを計上し,あわせて公債金の減額を行うことを内容とする。この補正による歳出総額の増加は2兆339億円となり,歳入については,租税及び印紙収入11兆8,930億円の増収を見込むとともに,公債を1兆3,220億円減額することとし,その結果公債依存度は18.1%となった。

(3) 財政資金対民間収支の動向

62年度の財政資金対民間収支は,市場介入減に伴う外為の払超減にもかかわらず,国債の償還増に伴う発行超額の大幅減少により,全体では払超2兆5,557億円と59年度以来3年振りに払超転化した(61年度8,575億円揚超)

第11-1表 予算規模の推移

(4) 63年度予算,財政投融資計画及び地方財政計画

〈1〉63年度予算

63年度予算は63年1月25日国会に提出され,3月10日に衆議院,4月7日に参議院でそれぞれ可決成立した。63年度予算は,引き続き財政改革を強力に推進するとともに内外からの内需拡大の要請に配意することとして編成された。

すなわち,経常的経費を特に厳しく抑制する等により特例公債を1兆8,300億円減額し,財政再建目標達成に向けて着実に前進するとともに,内外からの内需拡大要請に配意して,一般公共事業費についてNTT株の売払収入を活用する等により,62年度当初予算比19.9%増という高い水準を確保した。この結果,63年度一般会計予算額は56兆6,997億円となり,前年度に比較し2兆5,987億円,4.8%増と57年度予算以来の伸びとなった。また,一般歳出(国債費,地方交付税交付金及び産業投資特別会計への繰入れ以外の歳出)の規模は,32兆9,821億円で,前年度比1.2%増となっている。

(ア)歳入予算

一般会計歳入のうち租税及び印紙収入は,前年度補正後予算に対し2兆30億円増の45兆900億円,また,その他収入については,同3,221億円減の1兆4,687億円となると見込まれているほか,国債整理基金特別会計受入金1兆3,000億円(183.8%増)を計上している。また,公債発行額は,62年度当初予算比1兆6,600億円減の8兆8,410億円となり,公債依存度は15.6%と50年度補正予算において特例公債を発行して以来最も低い水準となった。

(イ)歳出予算

歳出予算総額の前年度比伸び率は,4.8%,また,一般歳出は同1.2%と57年度以来の伸び率となった。

主要な経費についてみると,社会保障関係費については,今後の高齢化社会においても安定的かつ有効に機能するように長期的視野に立って制度を築き上げていく観点から編成され,国民健康保険制度の改革等諸般の制度・施策の合理化・適正化に努めるとともに,引き続き在宅福祉施策等身近な施策については重点的配慮がなされ,62年度当初予算比2.9%増の10兆3,845億円となった。

公共事業関係費については,厳しい財政事情の下ではあるが,内需の拡大に資するとともに社会資本の整備を促進するため,一般会計において62年度当初予算と同額の6兆824億円を確保するとともに,NTT株式売却収入の活用により1兆2,000億円を産業投資特別会計社会資本整備勘定に計上し,合わせて一般公共事業関係費として,62年度当初予算比19.9%増の7兆2,173億円を計上している。

文教及び科学振興費については,教職員定数の改善,文教関係施設の整備,私学助成の推進等を図るζととし,62年度当初予算に対し84億円,0.2%増の4兆8,581億円を計上し7ている。

また,厳しい財政事情の下にあって,60年9月に策定された政府開発援助についての第3次中期目標を踏まえ,一般会計政府開発援助予算については,62年度当初予算比6.5%増の7,010億円,経済協力費については,同5.1%増の6,822億円を計上している(第11-2表)。

第11-2表 一般会計歳出予算の主要経費別分類

〈2〉63年度財政投融資計画

63年度財政投融資計画の策定に当たっては,内需の拡大,社会資本の整備,資金還流措置の推進など政策的な必要性を踏まえ,また資金需要の実態を勘案し,重点的・効率的な資源配分を行うこととされた。この結果,6:3年度財政投融資計画の規模は,62年度計画に比較し2兆5,327億円,9.4%増の29兆6,140億円となっている。このうち,郵便貯金特別会計,年金福祉事業団及び簡易保険郵便年金福祉事業団の資金運用事業に対する融資4兆2,700億円を除いた規模は62年度計画比6.8%増の25兆3,440億円となっている。

資金配分については,国民生活の向上と国民経済の発展に資する見地から,住宅,生活環境整備,経済協力等に重点的に配意することとしている。また,地方財政の円滑な運営に資するため,地方債に充てる資金運用部資金及び簡保資金について所要額を確保することとしている。

63年度財政投融資計画の原資としては,62年度計画額に比較し2兆327億円,6.5%増の33兆1,140億円を計上している。このうち,29兆6,140億円については,63年度財政投融資計画の原資に,また,3兆5,000億円については,63年度において発行される国債の引受けにあてることとしている(第11-3表)。

第11-3表 財政投融資計画の使途別分類

〈3〉63年度地方財政計画

63年度の地方財政計画は,引き続く厳しい地方財政の状況に鑑み,おおむね国と同一の基調により節度ある行財政運営を行うことを基本として策定された。

すなわち,歳入面においては,地方債の抑制に努めるとともに,地方税負担の公平適正化を推進しつつ地方税源の充実と地方交付税の所要額の確保を図ることとし,また,歳出面においては,経費全般について更に節減合理化を図るとともに,生活関連施設等の整備と地域の特性を生かした個性豊かで魅力ある地域づくりを推進するため必要な地方単独事業費の確保に配意する等限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化が進められた。

63年度の地方財政計画の総額は57兆8,198億円であり,前年度に比較し3兆4,402億円,6.3%の増加となっている(第11-4表)。

第11-4表 地方財政計画


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