昭和60年

年次経済報告

新しい成長とその課題

昭和60年8月15日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

第3章 人口高齢化と経済活力

我が国の老齢人口比率(65歳以上人口の総人口に対する比率)は,現在約10%程度と,他の先進諸国に比較してかなり低い水準にあるが,わずか15年後の2000年には16%へと上昇し1980年のスウェーデン並みになった後,2020年には22%にまで達すると見込まれている。こうした世界に例をみない急速な人口の高齢化に伴って,公的年金や医療保険の給付も大幅に増大する可能性が高い。

このため,これを支えるための負担も大幅に上昇するものと見込まれている。

ちなみに厚生年金保険の保険料率をみると,本年4月の法律改正により将来の負担軽減が図られたものの,2020年以降には,現在の約3倍の,税込み月収の30%弱にまで達する見通しである。また医療保険についても,65歳以上の高齢者の一人当たり医療費は,現在,青壮年層の約6倍となっているため,人口高齢化に伴ってかなり上昇する可能性が高い。こうした社会保障支出の増大による公的部門の拡大は,既に西欧諸国で顕著になっているが,それらの国では勤労意欲や貯蓄率の低下,失業の増大等,経済のサプライ・サイド(供給側)の悪化に悩んでいる。そこで本章では,我が国の人口高齢化に伴う公的部門拡大の要因とその影響を,財政赤字に伴う財政錯覚の発生,公的年金や医療保険制度の財政運営等を中心にみた後,将来の公的部門の拡大が我が国のサプライ・サイドに与える影響について分析することにしたい。


[目次] [年次リスト]