昭和55年

年次経済報告

先進国日本の試練と課題

昭和55年8月15日

経済企画庁


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第II部 経済発展への新しい課題

第4章 民間活力の活用

第2節 サービス経済化の進展

(サービス経済化)

経済発展の過程で物的部門だけでなく,サービス部門も拡大する。このいわゆるサービス経済化は着実に進行している。サービス業が急速に拡大しただけでなく,金融・保険,通信業など広い意味でのサービス分野のウエイトも高まった。また,物的な生産,流通を担当する部門でも,情報管理やデザインなど直接の製造,運搬以外の重要性が高まるなどサービス化が進んでいる。

こうしたサービス部門の拡大の要因を産業連関分析によってみると,①最終需要の構成比の変化,②各最終需要の内容の変化,③中間投入構造の変化,の3つの要因がそろってサービス部門の比重を高める方向に作用している( 第II-4-8図(1) )。まず,最終需要の構成比の変化についてみると,45~53年の間に名目総需要のなかでの消費支出のウエイトが高まっており,もっぱらこれが寄与している( 同図(2) )。次に,各最終需要の内容の変化については,消費内容のサービス化が影響している( 同図(3) )。また,中間投入構造の変化もサービス業の比重を高める上で寄与しており,産業活動に伴って必要になる外部サービス需要も増大していることがわかる。

(サービス業の従業者の拡大)

このような需要の増加に伴って,サービス業での従業者の増加も著しい。50~53年の間の全産業の従業者数の伸びは6.3%であるのに対し,サービス業では11.8%の高い伸びとなっている。その中では,第1に対個人サービス関連の伸びが特徴的である。特に,医療,保健,社会福祉の分野では,50~53年の間に19.3%の伸びを示したが,その中でも老人福祉施設,保育所などの従業員が大幅に増加している。また,教育関係でも,学習塾,ビジネスビデオなどが伸びている。さらに,従来の家事サービスが企業化されたデリカテッセンなどの増加も著しい。

第2に,事業所関連サービスの伸びも顕著である。情報サービス,調査,広告,その他の事業サービス(警備保障,梱包発送,職業あっせんなど),専門サービス各種コンサルタントなどのいずれも高い伸びを示している。こうした事業所関連サービスの中でも,注目されるのは企業に機械設備をリースするリース産業であるが,その伸びも目立っている。

第II-4-9図 サービス業の業種別設備投資動向

(サービス業の設備投資)

設備投資の面でもサービス産業の伸びが大きい。サービス業の設備投資動向を中小企業庁及び中小企業金融公庫の調査によってみると,52年度12.8%増,53年度22.1%増とかなりの増加を示したあと,54年度(実績見込み)も15.0%増と引き続き堅調に推移している。業種別にみると,リース業,情報サービス業の伸びが著しく,54年度の投資水準は48年度の2倍を超えている( 第II-4-9図 )。また,規模の点でも54年度のリース業の投資額は約8千億円と鉄鋼業の設備投資額を上回った。

医療産業でも資本装備が高まっている。医療施設の設備投資動向について,民間病院・診療所建設着工面積と医用電子装置(ME)の国内出荷の推移をみると,民間病院・診療所建設着工面積は前回の石油危機後落ち込んだが,50年以降かなりのテンポで回復し,医用電子装置の出荷も52年以降急テンポで増加している( 第II-4-10図 )。今後も医療サービスの高度化をめざして,医療施設の充実が図られるとみられる。

さらに,労働省の調査によってサービス業の今後3~5年間の売上高の見通しをみても,情報サービス業,旅行業,対事業所物品賃貸業,広告業,建物サービス業,その他事業サービス業などではかなり伸びるとみる企業が多くなっている。

以上のように,サービス部門では,今後も需要の増大や新しいニーズの企業化が期待され,労働力の吸収や資本の集積が進むものとみられる。


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