昭和55年

年次経済報告

先進国日本の試練と課題

昭和55年8月15日

経済企画庁


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第I部 景気上昇と物価安定への試練

第4章 今回の石油危機における財政金融政策と物価対策

第2節 機動型から総需要管理へ向かった財政政策

(公共投資の抑制)

金融面で強力な引締め政策がとられたのと同じく財政政策も52年度以来の景気回復促進型から機動型,さらには総需要管理のための抑制型へと変化した。

財政政策の転換は,まず公共事業の契約率の推移に特に反映されている。公共事業は53年度には積極財政の下で上半期の契約目標73%(実績,対当初歳出予算現額比で76.0%)という促進型で執行された。しかし54年度に入り,積極財政の必要が薄れるとともに「機動型」の方針(上半期契約率,目途65~70%,実績,対当初歳出予算現額比で16.7%)に転換した。さらに,54年度後半には,物価の騰勢が強まったことから,55年1月には年度予算の施行にあたって公共事業等歳出予算現額の5%の当面留保が決定され,年度末の最終契約率は93.7%と総需要抑制政策がとられた49年度並みの低い契約率となった。55年度においても上半期契約率を全体として60%程度にとどめ,抑制的な事業執行を図ることとされた。

このような公共事業執行の抑制とそれに伴う翌年度への繰越しに加えて,財政再建のための予算規模の拡大率の鈍化,建設資材価格の高騰等によるデフレーターの上昇などから公共投資の実質GNPの成長に対する寄与度は54年度にはマイナスに転じた。こうした中で公共工事の受注は55年に入って鈍化している( 第I-4-13図 )。


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