昭和54年

年次経済報告

すぐれた適応力と新たな出発

昭和54年8月10日

経済企画庁


[次節] [目次] [年次リスト]

第2部 活力ある安定した発展をめざして

第3章 雇用安定への課題

第1節 石油危機後の雇用動向の特徴とその要因

1. 雇用動向の特徴の四つの側面

石油危機後の雇用動向の特徴を大づかみに示してみると,第1は,産業別就業者数において,それまで増加していた製造業が減少に転じたことが目立つ( 第II-3-1図 )。他方,農林水産業は減少幅が縮小し,非農林非製造業では引続き増加している。

第2は,石油危機後の時期を景気回復の始まった50年度を境にそれ以前とそれ以後に分けてみると,①前期においては就業総数が減り,後期においてはかなりの増加に転じている。②後期においては製造業の減少テンポが下がり,農林水産業も減少テンポが下がり,建設業,卸売・小売業,サービス業などの非製造業の増加テンポが高まっている。③性別にみると,男子は両期を通じて石油危機前より増加テンポが下がっているが,女子は前期において減少,後期において急増という際立った変化を示している。いわば,前期,後期の就業者総数や産業別動向の変化の多くは女子の動向に関係がありそうである。

第3は,雇用者について規模別にみると,①製造業では前期においいは各規模とも減っていた(小を1~29人,中の下を30~99人,中の上を100~499人,大を500人以上とすると,小で14万人減,中の下で5万人減,中の上で14万人減,大で32万人減)が,後期では100人以上では引続き減っている(中の上で8万人減,大で42万人減)ものの99人以下では増加に転じている(小では15万人増,中の下では4万人増)。②非製造業では両期を通じで各規模とも増えているが,後期では規模が大きいほど増加テンポが落ちている(小では54万人増→94万人増,中の下では13万人増→32万人増,中の上では16万人増→23万人増,大では15万人増→6万人増)。③性別にみると,製造業において男子は100人以上の規模で後期で減少幅が拡大している(前期25万人減,後期48万人減)が,女子は499人以下では増加に転じており(前期18万人減,後期20万人増),500人以上でも減少幅が縮小している(前期16万人減,後期4万人減)といった点が目立つ。

第4は,従業上の地位別にみると①製造業では前期においては各形態とも減っている(自営業主27万人減,家族従業者6万人減,雇用者68万人減,うち常雇42万人減,臨時・日雇26万人減)が,後期では常用雇用者の減少(49万人減)が続く反面,自営業主と臨時・日雇雇用者が増えている(自営業主11万人増,臨時・日雇16万人増)。②非製造業では,前期においては常用の雇用者の増加が目立つ(121万人増,これに対し,自営業主は7万人増,家族従業者は持合い,臨時・日雇は9万人減)が,後期では各形態で増えている(自営業主37万人増,家族従業者22万人増,常雇119万人増,臨時・日雇57万人増)。

これらはいずれも関心をよぶ特徴であり,石油危機後の経済過程と密接に結びついていると考えられ,かつ雇用問題の性格を判断する貴重な手がかりになるものである。

2. 雇用情勢変化の要因

それでは,このような雇用動向の特徴をもたらした要因を考えてみよう。

(1) 産業構造の変化

(産業別需要動向の変化)

石油危機後の雇用動向の一つの顕著な特徴は製造業の減と非農林非製造業の増である。これは,産業自体の活動状況に由来している。すなわち,石油危機前の経済成長は製造業がいわばリーデイング・インダストリーであり,その発展につれて第三次産業も発展するという形をとっていた。しかし,49年以降は明らかに流れが変わった。53年度の実質GNPは48年度に比して22%も増えているのに対し,鉱工業生産指数はこの間に5%しか増えていないことに端的にそのことが現われている。輸出の増加が中心となって設備投資を誘発し,それが内需を盛り上げるという従来の輪出依存型の成長パターンから,内需そのものが中心の成長パターンに変ったのであり,そのことが産業別雇用動向にも現われているといえる。建設業の雇用増も内需の一種である公共事業の拡大に伴うものである。

しかし,就業誘発係数(生産1単位当たり必要労働量)の高い非製造業が相対的に伸びているとはいえ,全体として経済成長率が鈍化しているので非農林部門の雇用需要総量の伸びは緩く,他方において全体としての労働供給が増えているので労働需給が緩和し,それまでかなりのテンポで減少していた農林業就業者数の減少テンポが下がった。そして,完全失業者数は48年度の68万人から53年度には122万人と終戦直後を除けば戦後最高になり,失業率も1.3%から2.2%に上昇した。

(製造業内部における変化)

製造業のなかにおいても,需要構造の変化の影響がみられる。

第II-3-2表 は,規模30人以上の事業所の常用雇用についてのものであるから,すべての雇用動向を示すものではないが,およその特徴をみることができる。これによると,パルプ・紙,化学,鉄鋼,非鉄金属などの素材産業や一般機械といった投資財産業の雇用減が目立つ。これは,やはり経済の需要構造の変化を反映したものであろう。

また,繊維,家具・装備品,輸送用機械(主として造船),「その他」といった産業でも雇用減が続いているが,これは円高等による輸出不振,輸入増の影響を受けたことも一因とみられ,国際経済関係の雇用への影響として注目される。

(2) 製造業の雇用調整

(雇用と労働時間の関係)

ところで,かつては増え続けていた製造業の雇用が49年以降は減り続けているということは,雇用失業情勢全般にわたってこ大きな影響を及ぼしている。鉱工業生産が50年初から増加し続けているのに,満3年以上経っても雇用は減り続けているということは過去の局面にはなかったことである( 第II-3-3図 )。

これは生産が49年1月から50年3月まで20%も下落した時に雇用調整は全面的に行われず,その後生産の回復があっても回復のテンポは緩やかで,かつ生産性の上昇がそれを上回ったため,雇用の減少が続いたものと考えられる。しかし,生産の水準と雇用量がマッチするところまで達すれば,雇用減は止まるはずである。その時はまだかなり先なのであろうか。

ところで,雇用者数の減少は労働需要が減少したことを必ずしも意味するものではない。需要の総量は,労働時間と雇用者数の積,すなわち労働投入量でみる必要がある。

これを製造業において計算すると( 第II-3-4表 ),まず,景気のピークであった48年に対して50年には約13%も労働投入量が減少しているが,そのうち半分以上の8%程度は労働時間の減少で調整された。残りが雇用者数の減少で調整されたわけである。

こうした労働投入量の変動に対する調節が雇用者数の増減だけで行われていたとしたら,落ち込みも激しかったであろうが,生産が増加する局面では雇用も増加したはずである。こうした考え方をもとに一つの仮定計算をしてみると,労働時間が過去のトレンド程度にしか減少しないという仮定のもとでは50年の雇用者数は大幅に減少し,1,063万人となる。実績値は1,138万人であるから,この仮設例では75万人程度の労働力需給のアンバランスが追加されることになる。

そのかわり,50年以降は労働時間が実績ほど増えず雇用者数が増加を続けるということになったであろう。そして53年の雇用者数の試算値は,1,105万人程度と実績値とさほどかわらない値になる。

このことは,生産増に対し労働時問を増やし雇用を調整するという対応が,この時点で一応の段階に達したことを意味することになる。この点の評価は後で検討することとするが,生産水準に対する雇用調整の遅れという意味での雇用減は終局段階に近づいたといえよう。

(製造業の雇用調整)

ところで,50年にかけて生産が激減する局面では労働時間を大きく減らし,雇用はそれほど減らさず,雇用の内容としては男子とともに女子をより強い程度で減らし,臨時・日雇も減少したが,その後生産が拡大する過程で労働時間を増やし,雇用面では女子や臨時・日雇を増やしながら男子,常用雇用はより一層の減少となったのはどうしてであろうか。

これは企業の雇用調整態度の変化によるものとみられる。第1章で減量経営が二段階に分けられると指摘したが,雇用調整にも二段階あったといってよかろう。

第1段階は,企業の先行き経済成長期待がまだ定かでなく,遠からず従来通りの成長に復帰する可能性もあり,しかし現実の環境は急速に悪化しつつあるという状況の下でとりあえずあらゆる種類の労働投入景削減方法をとったが,どちらかというと調整コストの低い労働時間や女子中心のパートタイマーや臨時といったものによる部分が多かった。それは,男子常用雇用のように調整コスト(解雇に伴う割増退職金や解雇後の生産回復に際しての再雇用のためのコスト)の高いものについでは,いったん雇用を削減すると再雇用が容易でないからである。

ところが,第2段階に入ると現実の推移は,生産が回復し始めたとはいえそのテンポは緩やかで,とても従前の高度成長に戻らないことが企業に認識されできた。とすると,そのような期待成長率に合うように男子常用雇用を調整することとし,労働投入量増大の必要性に対しては調整コストの低い手段で応ずることにしたと考えられる。

労働投入量の変化に対する企業にとっての限界コストは常用雇用者数を増やす場合と,所定外労働時間を増やす場合とでは大きく相違する。

すなわち,雇用者数を増やす場合,基本給のほかに,固定費的な,特別給与,諸手当,その他の労働費用(退職金,法定・法定外福利費,募集費,教育訓練費等々)も増加する。所定外時間に対する手当の算定の基礎には,これら固定費的な労働費用は含まれず,労働時間を1単位増やす場合は基本給に25%か,若干それを上回る率を掛けたものが企業にとっての限界コストとなるが,一般的にはそれは雇用者数を一単位増やす場合の限界コストより小さい。したがって,雇用者を増やす方が割高ということになる。

また,労働時間増大のなかには,50年1月から適用された雇用調整給付金制度により企業が景気の変動に伴う失業の発生防止のために行う一時休業などの雇用調整に対し援助措置がとられてきたが,この一時休業の必要性がその後なくなったため所定内労働時間が増えるといった事情もあった。

ところで,終身雇用慣行は大企業での普及が多いこともあって,大企業の常用雇用の調整コストは高い。そして,大企業(ことに素材産業)では経済環境が特に厳しかったため,期待成長率もそれだけ大きく低下し,50年以降の時期で調整コストの高い常用,ことに男子の減少を大きくした。

(男子中高年齢層に厳しい雇用調整)

それでは,男子雇用者の削減はどのようにして行われたのであろうか。

製造業男子労働者の年齢構成をみると( 第II-3-5図① ),24歳以下の層の割合が最近下がっている。これは,すなわち定年制の下で,定年で退職する人を新卒の採用者で補充しないという形で雇用量を減らしたことを示唆する。もちろん,希望退職を募るとか,指名解雇といったこともありうるが,最近は定年でやめるという形のものの比重が増加している。

そこで,定年制についてみてみると,製造業において55歳定年制をとる企業は48年の47.5%から53年には40.7%に減る一方,56歳(1.5%→5.1%),57歳(5.0%→9.6%),58歳(4.4%→5.9%)のウエイトは高まっており,定年延長が徐々に進んでいることがわかる(労働省「雇用管理調査」)。

ところで,かつては実は定年制がありながら再雇用制度や勤務延長制度によって事実上定年後も雇用していたものが,このところそのような制度をとりやめる企業が多くなっている。とくに,定年を延長した企業のうちそのような雇用延長制度がない企業の割合は製造業で48年に11.1%だったものが53年には23.4%になっており,なかでも規模5,000人以上の企業では10.3%から53.8%に急増している(同上調査)。

そして,新卒の採用が抑えられているといっても,新規採用者の年齢別構成は製造業においては29歳以下の層が増えている( 第II-3-5図② )。すなわち,製造業における在職者の年齢構成からいうと若年層は減っているが,それでも採用者の多くは若い人なのである。逆にいえば,中高年齢層の再就職が困難になっていることを示している。

かくして,例えば定年退職者数は49年に14万人だったのが52年には21万人に増えているが,うち転職者は両年とも7万人で離職者が7万人から14万人に増えている(「就業構造基本調査」)といった具合で,男子中高年齢層の失業の滞留という問題につながっていく。

なお,定年に限らず,製造業からの異動者一般についてみると( 第II-3-6図 ),異動者のうち転職者,すなわち再就職した者の割合は確かに最近下がってきているが,男子については52年で6割が再就職しており,うち3割弱が製造業ヘ,1割強が卸売・小売業へ,1割弱がサービス業に就業している。従って,失業あるいは職業からの引退として残るのは異動者の4割ということになる。このような異動状況のなかで,とくに製造業への再就職の比率が49年の約40%から52年には27%に下がっており,この低下部分が失業の増加につながる可能性があるものとして注目される。

(3) 非製造業の雇用増加

非農林非製造業の雇用増加が石油危機後も続いているのは,それなりの経済面からくる実需があったためとみられる。それは,女子中心のパートタイマーとか臨時・日雇といった可動性の高い雇用ばかりでなく,常雇といった層もかなりの増加を示していることからもうかがわれる。しかし,石油危機後を50年を境にわけてみると,それ以前は常雇の増が目立つが,それ以降は各雇用形態とも増えているのはどのように理解されるのだろうか。

第II-3-7表 未充足求人欠員率

その一因は高度成長期に未充足求人があったことに求められよう。未充足求人欠員率をみると( 第II-3-7表 ),48年の製造業は6.9%とかなり高く,ここで人手不足であると他産業ではなかなか人がとれなかった。事実,卸売・小売業,サービス業のなかの「旅館,その他宿泊所」や「自動車整備・駐車場業」では製造業以上の欠員率であった。それが50年には製造業が2.7%ヘ急減するとともに,これらの諸産業の欠員率もかなり下がっている。すなわち,製造業の方での牽引力が弱まるとそれまで人手不足であった部門で雇用が可能になったということであろう。50年以前で非製造業の常雇の増大が大きかったのはそのような要因もあったと考えられる。いわば,50年以降の製造業において成長率低下への適応としての雇用調整のために常雇を減らす圧力がかかったのと逆に非製造業では常雇を増やすことが環境への適応であったともいえる。

その後は,一応未充足求人も満たされ,製造業との競合関係もなくなったので需給関係が就業者の増減により直接的に反映するようになり,非製造業の成長とともに常雇も,臨時も,自営業主も増えるという姿になったと考えられる。

なお,製造業ではそれほど顕著でないが,とくに非製造業で50年以降中小企業ほど雇用の増加が大きいが,これにも大企業は労働供給過剰であるが,中小企業は人手不足という事情が一因になっているとみられる(前掲 第II-3-7表 )。

(4) 女子労働力率の上昇

さて,先にとりあげた雇用動向の特徴のうち50年度までの就業総数の減少とその後の急増という点に対応するのが女子の労働力率(労働力人口/15歳以上人口)の変化である。その内容と背景を考えてみることにしよう。

(男子の労働力率は低下)

その前に,男子労働力率の動きを一べつしておきたい。

男子の労働力率は40年代は82%前後で推移し,48年度には82.1%であったが,その後低下して53年度には80.2%になっている。これを年齢別にみると,進学率上昇の影響のある24歳以下の傾向的低下を別にすると,雇用者世帯の55歳以上層でそれまで上昇していたのが48年を境に低下に転じたのが目立つ(55~64歳,48年89.4%,53年87.3%,65歳以上同50.0%から44.8%ヘ)。

これは,ただですら高年齢層の求人倍率が低く,就職が難しいところへ,48年頃に比して53年は求人倍率が大きく低下しており,就職が更に困難になったため,労働力であることをあきらめる動きが出たことが一因であろう( 第II-3-8表 )。また年金制度の充実が進んでいることも影響しているものと思われる。

このようにして,男子高年齢層が労働市場から引退しかけているようであるが,その労働力率の水準自体は国際的にみればなお高い。1976年について,65歳以上の労働力率は日本は43.1%であるが,アメリカ19.4%,西ドイツ11.1%,フランス9.9%といった状況である(OECD統計)。日本は,まだこれらの国より農業就業者のウエイトが高いことも労働力率の高さの原因になっているが,働くことに生きがいを感ずる人も少なくないということであろう。しかし,今後,これらの年齢層の人口が増えてくることも考え合わせると,高年齢層の所得確保の充実とともに,労働以外の生きがいや社会参加の場の開発も雇用安定のために重要になってこよう。

(女子の労働力率は反転上昇)

女子の労働力率は傾向的に低下していたが,50年度の45.8%を境に反転上昇し,53年度は47.5%になっている。仮に53年度の労働力率が50年度並とすれば,労働力人口は78万人少ないことになることからみてもこの労働力率の上昇は注目される。

また,女子の就業者が減っていた50年度までは労働力率が下がっており,増加に転じたそれ以降上昇しているという点も注目される。いうなれば,労働力率が労働需要の影響を受けてしまうという姿がうかがわれる。これは後述する主婦層で典型的にみられる労働需給に感応的に労働力化し,失業になりにくいという現象である。

いずれにしろ,石油危機後の男子労働力率の一貫した低下傾向に対し,女子はいったん下がってから反転したという推移は注目されるところである( 第II-3-9図 )。

全体としての女子労働力率の傾向的低下は労働力率の高い農家のウエイトが下がってきたためであった。そこで,雇用者世帯の女子労働力率を年齢別にみると( 第II-3-10図 )進学率上昇の影響のある19歳以下と高年齢である65歳以上の層を除き,各年齢層ともこのとこる上昇傾向にある。ことに,25~39歳層は48年をピークに50年まで下がり,その後かなりのテンポで上昇するという女子全体の労動力率の動きと似た推移を示しているのが注目される。

この年齢層は結婚して子供を持つ年代に相当するために,この層の労働力率と女子有配偶者の労働力率の動きは 第II-3-11図 のとおりよく似ている。そしてこれらの層の失業率を有配偶者の失業率でみると,未婚者よりかなり低くかつ安定している。

すなわち,石油危機後の女子労働力率変動は,25~39歳の有配偶者の動きに関係がある。この層は,世帯主に一定の所得があり主婦としての家事や育児という仕事もある層である。従ってこの層は労働需要があれば労働市場に入るし,なければ非労働力化する者が多いと推測される。このように,労働需給に感応的に労働力化するので失業状態にはなり難いと考えられるのである。

(女子労働力率上昇の要因)

雇用者世帯の労働力率上昇傾向を中心とした女子労働力率の上昇の要因をもっと広く求めてみると,諸外国とも共通した事情がまず第1にあげられる。①耐久消費財の普及等による家事労働の軽減,②女子の職業参加意識の高まり,③労働需要側において第三次産業の発展など女子に適した職業機会の増大などがそれである。国際的にみても,アメリカの女子労働力率は1965年の44.3%から76年には54.3%ヘ,イギリスは48.8%から56.0%へといずれも顕著な上昇をみせている。西ドイツは49.0%から48.3%と変化していないが(OECD統計),それでも日本の78年の雇用者世帯の40.3%よりかなり高い。

第2は,日本特有の事情であって,昭和50年ごろから企業は期待成長率の低下の下に調整コストの低い労働力を需要するようになり,それが女子中心のパートタイマー労働者を需要するようになったということであろう。また,供給側の事情としては,近時子供の数が減り,女子の育児労働が軽減されているということがありそうである。すなわち,乳幼児に当たる0~4歳人口と女子25~39歳人口との比率をみると,30年代の低下,40年代前半の上昇のあと46年の0.73をピークに年々下がっており,53年には0.64になっている(総理府「人口推計資料」)。46年頃は戦後のベビーブームの第二の波であったから異常に高かったとしても,それ以前の数年間が大体0.67前後であったのでそれより若干低くなっている。これも女子労働供給の増加要因になったとみられる。

なお,男子の所得の動向と女子の労働力率の関係については女子労働力で「仕事が従な者」の増加に関連して後述する。