昭和53年

年次経済報告

構造転換を進めつつある日本経済

昭和53年8月11日

経済企画庁


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第2章 新しい回復パターンの模索

昭和52年度経済の動きの底には,石油危機以降の環境変化に対する経済主体の適応状況が反映されていた。

すなわち,各経済主体は,石油危機後激変した新条件への適応に大いに努力しつつも,とまどっていた。そして,コスト高,需要減に対し企業はいわゆる減量経営に努め,また家計は,インフレと将来不安に対し消費性向を低めた。このような事態のマクロ的な帰結は縮小スパイラルであり,これに対処するため,政府は財政面からの刺激に努め,結局大幅な赤字をあえてすることになった。しかし,民間部門の需要はなかなか動き出さず,現実の景気回復力は弱かった。

従って,今年に入ってからの景気には明るさがみられはじめているものの,その持続性を見極めるためには,これら経済主体の石油危機後の適応の進捗状況を把握することを通じ,設備投資,個人消費,住宅投資といった民需の自律的回復力の評価を行う必要があろう。

ところで,以上のような観点から最近の経済をみると,このような適応がかなり進み,さらに金利の戦後最低水準への低下,物価の落ち着き,円高による原燃料安,賃金上昇率の低下など新しい状況が適応への支援材料になり,加えて新しいニーズに積極的に対応する企業努力も生れつつあるやに窺われる。こうした動きが定着していくならば,日本経済に中期的にみて石油危機後の移行期から脱却する条件が整いつつあることになるが,果してそうであろうか。またこのような経済主体の適応をより着実にするための公共部門の役割と問題は何か。


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